【アカデミズムへの誘い(2006年11月20日)】

  Neurology誌の最新号に教室の三浦君の研究論文(研究紹介参照)が載っています。これは教室で発見したSpinocerebellar ataxia (SCA)-16(遺伝性脊髄小脳変性症16型、本疾患自体は教室の三好安君がNeurologyに新しい病気として既報)の原因候補遺伝子がcontactin-4 (CNT-4)であることを報告したもので、大変重要な発見です。レベルの高いNeurology誌にfull paperがすんなりと採用されたのも、その高い意義が認められてのことと思います。これは三浦君が大学院の4年間かけてwhole genome screeningの末にようやく疾患の罹患者で必ずみられ非罹患者ではみられない変異(多型ではない)を発見したものです。これは3’ 非翻訳領域にある変異なので、これが直接的に小脳障害を起こしているかはなお研究が必要ですが、3’ 非翻訳領域にある変異で遺伝病が起こることが最近わかってきて大変注目されてきているところです。

  三浦君は私が教授になった年に入局した、いわば一期生で、教室もようやく神経内科専門医研修終了後に大学院に進み4年間がんばった世代が臨床に戻ってきて研究活動を始める時期になったと感慨深いものがあります。今はちょうど教室の様々な研究を世界に向けて情報を発信すべく、high impact factorのjournalにチャレンジし始めた時期にあたります。たとえば、ギラン・バレー症候群の運動ニューロン軸索障害の神経生物学的研究、皮質異形成によるneuronal migration disorderとしての新しいてんかんモデル、視神経脊髄型多発性硬化症の神経免疫学的研究、運動ニューロン疾患の神経成長因子研究などが投稿あるいはrevision中です。いずれも教室の大学院生それぞれにとって初めての研究論文にあたるものです。

  初期臨床研修必修化で多くの医学部卒業生が大学を離れ、一般病院で初期研修をし、さらには後期専門医研修まで大学以外でする人が増えてきたような時代ですが、私は一般病院にはないアカデミズムのよさが大学にはあると思っています。私たちの世代は、医学部を卒業したころはようやく頭部CTが出てきたようなころで、わからない、治らない神経内科の時代でした。脳はおもしろいが、ヒトの脳へはアプローチする方法がないといった時代です。それが、この四半世紀で様々な研究方法が開発され、神経内科は特に研究において大きく発展しました。しかし、最近のneuroscienceの成果を基にした、神経内科領域の研究の飛躍的な発展とその臨床への応用はまさにこれからと感じています。これからは若手の時代です。Neurologyは研究も臨床も奥が深く本当におもしろい時代を迎えたと私は思います。これから神経内科の研究をスタートする世代が大きく神経内科の臨床を変えていく原動力になるものと期待しています。この意味で卒業後大学を離れた多くの研修医が大学に戻って再びアカデミズムの中に身を投じてくれることを期待しています。