【十年一日のごとき冬の日に:十年続けてよかったと思うこと(平成20年12月吉日)】

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  少し蛇足になりますが、従来の九大神経内科では積極的にはやってこなかったけれど、この10年来取り組んで、ある程度成果があがりつつあることを3つあげると、@神経難病のケア、A脳卒中診療、Bブレインセンター、となるでしょう。 Aについては、済生会福岡総合病院に来春には9床の本格的な脳卒中ケアユニット(SCU)ができ、脳血管内外科専門医資格を持つ神経内科医をはじめとして6人の神経内科医が脳外科医と協力して脳卒中センターを運用します。 福岡市民病院にも来年2月には神経専門病棟ができ神経内科医4名が脳外科医と共同で脳卒中センターを実施する方向です。初期臨床研修で全国的にも有名な麻生飯塚病院の脳卒中センターでは、村井君(前講師)がセンター長になって神経内科医6名で福岡県でも最多の脳卒中患者を診療しています。 来春には九大病院の神経内科にも国立循環器病センターで脳卒中を研修した専門医が教員で戻ってくる予定です。関連の拠点病院と連携した脳卒中診療が行えるようになると思います。 また現在、脳血管内外科専門医取得をめざして医局員が小倉記念病院脳外科や湘南鎌倉総合病院脳卒中診療科で研修していますので、脳血管内外科専門医資格をもつ神経内科医が着実に増えてくるでしょう。現在、脳外科手術の4割は脳血管内外科治療ということです。 このうちの少なくない部分は、脳血管内外科専門医資格をもつ神経内科医が担えるものと思います。循環器内科医の心カテと同様に神経内科医が活躍する時代も来るでしょう。
  Bについては、九大病院全体の脳機能検査を担うという考えで九大病院内にセンターを作るという構想は従来なかったのですが、新病院では外来棟神経内科・脳外科・精神科スペースに隣接した位置に脳機能検査の総合センターであるブレインセンターができ、すでに稼動しています。 病院全体の高度な脳機能検査を担うというのは、なかなかに大変なことですが、これは進めていったほうがいいです。MEG(脳磁図)はじめ様々な機器が入っています。 臨床心理士による種々の心理・知能検査も含めてこれらの検査システムを稼動させていくことが大切です。脳疾患に関するトランスレーショナルリサーチの拠点として育てていくことが望まれます。
  難病ケアと脳卒中では180度違う領域ですが、神経内科として避けて通るわけにはいかない重要な分野です。両方ともマンパワーを要しますので、両者を神経内科でカバーしながら、最先端の研究を並行してやっていくのは本当に大変です。 入局者も増えてきていますので、若い人の力を結集してやっていけば、なんとかなると思っています。

  肝心なことは、このようなシステムを作っても、そこに魂を入れるのは人間だということです。システムを動かす人が育たなければ、システムは形骸化してしまいます。結局、人間の育成が一番大事ということですね。 福岡県重症神経難病ネットワークに関わっていただいた、岩木さん、大道さん、産業医大の難病コーディネーターの方々(中井玉緒さん、現在の上三垣さんほか)、古江和弘日本ALS協会福岡県支部長、岩崎康孝元福岡県保健福祉部健康対策課長(現厚生労働省健康局疾病対策課課長)、 庄司紘史久留米大学神経内科前教授、辻貞俊産業医科大学神経内科教授、山田達夫福岡大学神経内科教授、谷脇考恭久留米大学神経内科教授、山田猛元九大神経内科助教授(現済生会福岡総合病院神経内科部長)、菊池仁志村上華林堂病院副院長、立石貴久助教など、多くの皆さんの尽力に心から感謝の意を表します。

  医療は、日々同じようなことの繰り返しです。しかし、ある意思をもって10年続けると、10年前と比べればやはり大きな変化があると実感します。意思ある継続が大切。