【牛の歩み:10−10−100をめざそう(平成21年1月5日)】

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  ところで、新入局者数が医局にとってどれほど意味がある数字かということになりますと、私はやはりこの数字は医局の死生を決するほどに重大と思います。 以前は大学を卒業する前に入局を決めていましたから、医局や医療の実情もわからないまま、なんとなくフィーリングで入局を決めていた人が大部分でしょう(私もそうでした)。 しかし、今は、大学を出て概ね2年間の間にいくつかの病院で実際のわが国の医療を経験して入局を決めるわけですから、入局する側も目が肥えています。各医局の実情や当該分野の将来性・待遇などよくよく調べてから入局を決めてくるわけです。 ですから、医局の側としてはよくよく魅力ある体制にしておかないと選ばれません。診療・教育・研究を含めた医局の総合力が問われていると思います。 せっかく福岡という恵まれた土地にあります。住みやすく、文化・スポーツ・料理・酒にも恵まれ、九州では唯一若年者を中心に人口が増えている都市です。これを生かして入局者数をもっと増やしたいものです。 地域医療問題に取り組んでおられる東北大学の伊藤恒敏教授の各都道府県で必要とされる医師数の推計によれば、福岡県は東京、大阪に次いで不足医師数の多い県となっています。 特に神経内科は患者さんの急激な増加(高齢化や環境の変化による)もあって需要に対する医師不足が顕著であることを実感しています。

  初期臨床研修必修化の弊害が叫ばれたため、平成21年度の医学部6年生からは卒後の初期臨床研修は1年でよいように再度変更になると新聞で報道されています。またまた入局者数が激変しないか懸念されます。 猫の目のようにシステムが変わり、それに振り回されるのは、いつも現場ですね。もともと九大神経内科では専門医研修を始める前に、卒後1年間は神経内科に入局したまま一般内科を研修していましたから、 研修システムとしては前のものに戻ることになりますので、何のための初期臨床研修必修化騒動であったかという気にもなります。
  しかし、初期臨床研修の必修期間が1年に短縮されても、入局の様相は元のようには戻らないであろうと思います。ことの本質は研修期間の長短ではなくて、選択可能性の有無にあるからです。 パンドラの箱はすでに開けられており、これに再び蓋をすることはできません。選択することを当然と考える世代が、これからも続くわけです。願わくは、より正しい医療情報・医学情報を得て選択をしてほしいものです。 私たちの医局もより適切な情報を提供するとともに、入局後の進路についてもより選択の幅を広く豊かにすることが望まれます。

  平成21年度の入局予定者の出身大学は7大学に及んでいます。様々な経歴の人が入ってきます。当教室・医局では、人事においては出身大学による区別はいっさいしておりません(九大のメジャー医局では毎年入ってくる人が多いので、出身大学による差別化はあるように聞いています)。 元々、うちは少なくとも半数は他大学の出身者なので、できるだけフェアーに行うようにしています。初期臨床研修終了後は、大学病院での1年間の神経内科研修、関連病院での2年間の神経内科研修(1年目は病棟、2年目はできるだけ外来診療も。これは病棟と外来では対象疾患が大きく異なるため)、 その後に神経内科のなかでの専門分野の研究または臨床となります。この段階では、大学院でもよいし、ナショナルセンターでもいいし、関連病院で臨床を続けるということでもかまいません。行きたい場所・研究の分野等は当人の自由です。 神経内科の先輩という立場からアドバイスはしますが、本人の希望と責任で決めてもらうようにしています。九大脳研・神経内科の中にも多様な研究分野がそろっており、広く大学院に受け入れ可能ですが、大学院を他大学等に行ってもらってもかまいません(現在、東大、東北大、北海道医療大学、国立循環器病センター、湘南鎌倉総合病院などに本人の希望で行っております)。 また大学病院での最初の1年間の神経内科研修を終えた後の関連病院への出張も、関連病院の待遇・研修内容・先輩のコメントなど全て情報提示した上で、第1希望から第3希望まで出してもらうようにしました。 平成21年度の関連病院への医師派遣は、2/3は第1希望の病院に、残り1/3も第3希望までの病院に派遣できる見通しです(今後は、入局者が誰も希望しない病院に強制的に医局から医師派遣を行うのは、不可能になってくると思います)。
  また、入局する側にしても、同期は多くいた方がいいと思います。同じ釜の飯を食った仲間には、生涯友人として付き合い、困ったときには助けてもらえるからです。 ただ、入局者はやみくもに数入れればいいというものではなくて、教室・医局の教育力に見合った、責任をもって教育できる許容範囲(上限)は、自ずからあると思います。 九大のメジャー内科・外科では、初期臨床研修必修化後も毎年の入局者は20名を越えるところが少なくありませんが、うちの場合は10人前後が目標値であり適正なレベルであろうと思います。大学病院と関連病院で丁寧に育てることが大事。

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