基礎科学の成果に基づく臨床医学のパラダイムシフト:神経内科も診断から治療の時代に

------神経内科や脳に関心がある研修医・医学生の皆さんへ(平成21年6月6日)】

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 私たちは、全国でも初めての重症神経難病ネットワークを1998年12月3日に立ち上げました。これは福岡県からその外郭団体の福岡県難病医療連絡協議会に委託された事業であり、私は発足以来その会長を勤めさせていただいています。重い障害を抱えて療養に困窮する神経難病の患者さんの長期療養を少しでも支えようということが、このネットワークの目的です。ネットワークには二人の看護師が難病コーディネーターとして、拠点病院の九大病院と準拠点病院の産業医科大学病院で、常勤専従で勤務しています。県下の病院の2割にあたる120病院あまりが本ネットワークの協力病院として参加してくれています。(スライド42)

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 平成18年4月にオープンした九大新病院北棟の2階に難病情報センターがあり、ここに福岡県重症神経難病ネットワークの拠点があります。中には相談スペースも整備されています。(スライド43,44)

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 上記のような看護報酬に見合わない手間のかかる神経難病患者さんの受け入れをネットワークの協力病院にお願いしても6〜7割は断られるというのがスタート時の状況です。10年間の本ネットワークの地道な活動を通じて、病院側の事情による受け入れ拒否率が1、2割程度にまで減ってきたことは、本当にうれしいことです。(スライド45)

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 本ネットワークで実施している療養相談の件数も毎年約3000件にのぼります。この福岡の難病ネットワークの活動は、厚生労働省にも全国の見本として取り上げられ紹介されています。3年前に福岡県難病医療連絡協議会は、二つ目の事業として難病相談支援センターを始めました。これも九大病院難病情報センターに併設されています。ここには社会福祉士の方が難病相談支援員として常勤しています。(スライド46)

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 同難病相談支援センターにも毎年500件を超える様々な相談が寄せられています。医療的な相談、患者交流会の支援、就労支援が主なものです。難病患者さんの就労支援はハローワークと連携して行っています。今年から障害者手帳をお持ちでない難病者の就労支援が国の制度として作られたことは、この不況の中で大変喜ばしいことです。難病相談支援員の大道さんの活躍はテレビでも報道され大きく取り上げられています。(スライド47)

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 長くなりましたが、九大神経内科の活動を中心に、近年の神経内科の動向について紹介しました。かっての神経内科のパラダイム、わからない、治らない、もうからないは、わかる、治る、もうかるに変わろうとしています。最後のもうかるということに関しては、収益性より公益性を大切にすることが肝要と私は思います。急性期脳卒中ばかりをやっていれば収益はあがるでしょうが、それ以外の神経難病の患者さんなどは切り捨てられることになってしまいます。脳卒中を専門にしていても種々の神経難病の初期の診療はきちんとできる必要がありますし、またその逆に慢性期の神経変性疾患を主に診療していても脳卒中急性期の初期の対応を経験しておく必要があります。あとは専門性の異なる病院神経内科間のスムースな連携で全ての神経内科疾患の患者さんをカバーしていくことが大切です。神経内科専門医の神経学的診察の技術料が医療保険で昨年から認められています。このように神経内科医の活動が適正に評価され、労力に見合った診療報酬が得られるのは当然のことといえましょう。そのうえで、恵まれない患者さんのための公益性をも大切にした医療活動が望まれると考えます。(スライド48)

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 我が国では、医師、とりわけ勤務医の労働は諸外国に比して過重で、労働に見合った報酬は得られていないことが大部分でしょう。たとえば、大学教授では心臓外科などの教授は欧米では文学部などの教授の給料とは桁が違うのが当たり前です。日本では、月に数日しか大学に出てこない文学部の教員と毎日病院で患者さんの診療に明け暮れる医学部の臨床の教員の給与には全く差がありません。これは医学部の教員は、医療職としてではなく教育職として採用されているからです。それにも関わらず大学病院での収益のことをやかましく言われるのは全くおかしな話というほかはありません。厳しい勤務医の立場から立ち去る医師が増えて地域医療が崩壊していく現実が、繰り返し報道されています。しかし、私たちは、患者さんのために、我が国の医療の現場から逃げることなく、医療を通じて人のため社会のために働こうではありませんか。患者さんからいただいた感謝の言葉は、医療者にとって大きな励ましとなります。このような励ましを糧に、治療とケア、CureとCareを目指して私たちは活動を続けたいと思っています。(スライド49)

 私たちの医局では、卒後1年目から10年目くらいの様々な大学出身の、実にいろいろな経歴の方を神経内科専門医研修に受け入れてきました。脳や神経の働きとそれを侵す病気の診療に関心のある方は、ぜひ九大神経内科の門をたたいてみませんか。大歓迎いたします。神経内科の領域は幅広く、神経内科を総合的に診る医師をめざしてもよいですし、神経内科の中でどれかの分野の専門家を目指すということでもよいと思います。神経内科専門医としての研修を積んだ後の進路・分野の選択は自由にさせております。

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 スライドは今年の新人歓迎の医局旅行の写真です。天気にも恵まれ、初日に川棚町の虚空蔵山登山、その夜は川棚温泉での大宴会、翌日は唐津で地引網とハードな二日間でした。コウイカが20杯(匹)ほど、スズキ、アジなどもとれ重い網をみんなで引いた甲斐がありました。(スライド50-53)


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