【シスコ・ギックリゴシ・ヨーテボリ:最近甲斐のあったこと (平成22年11月13日)】


 ヨーテボリは、スウェーデン第2の都市である。運河に沿って建てられた街並みが美しい港湾都市である。ここには第26回ECTRIMSが開かれたため、僕は招待講演で行った。80カ国から6600人の参加者である。このすぐ後にスペインで開催された国際神経免疫学会が1000人の参加者に過ぎないことを考えると、学会の規模がわかるというもの。今回は、九大神経内科からは3題演題を出し、若手の2題がトラベルグラント(travel awardですね)を獲得した(これは昨年も2題うちからはトラベルグラントに選ばれているので、ECTRIMSはアジアからの演題発表にもグランドを出して偉いもんだなと感じるし、また金持ちでうらやましいなあとも思う)。もう一題はベストポスター賞の候補になったが、残念ながら選ばれなかった。前にも一度候補にはなったことがあるが、なかなか選ばれるまでには至らない。九大からECTRIMSに本格的に演題を応募するようになってまだ3回目くらいだから、まあ次回に期待したい。

写真2写真2。写真3写真3。ECTRIMSでの講演の模様。初め(写真2)と終了時(写真3)。

  

 僕の講演はメイン会場だった(写真2, 3)。この前の講演は3番目くらいの会場だったと思うから、ランクがあがったね、くらいの軽い気持ちで実は行った。ところがこのメイン会場というのがものすごく広い。数千人は入るような馬鹿でかい会場である。僕のシンポジウムのときには、ぎっしり詰まっていて、数千人もの聴衆を前に講演をしたのは初めてである。これはややオーバーかもしれないが、今までで一番多い聴衆であったことは間違いない(ちなみに一番少なかったときは、8名しか聴衆がいなかったことがある。多かろうが少なかろうが全力投球が大事)。僕はアジア、特に日本におけるMSの病像の変遷について話し、概ね好評であったと思う。主に話したのは、日本における第4回全国臨床疫学調査結果と、そこで示された病像の変化を説明する九大での臨床免疫学的な研究成果である。疫学調査は全国の神経内科医が協力してくれたおかげであって、本当に多くの方の協力の賜物といえる。それを数千人の欧米のMSの専門家を前にして話すことができたのは、大変よかったと思う。頑張って皆で地味な疫学調査をやった甲斐があったというもの。

 我が国は、昔から定期的にMSの全国臨床疫学調査が行われているアジアで唯一の国である。最近では1989年に第3回、2004年に第4回疫学調査が行われている。第1回調査から30年余の期間における病像の大きな変化が明らかになってきている。おそらく第5回目の調査ではもっとこのような変化が如実に示されるものと思う。早くやりたいところだが、この手の全国調査は期間を十分開けてやらないと変化を検出できない。やはり15年ほどは開ける必要があるので、次回の調査は、たぶん2019年になろう(2018年の1年間に全国の医療機関を受診したMS患者さんを2019年1年間かけて調査するということになる)。それまでの間は、しっかり基礎的研究に精を出して病態の解析を進め、第5回臨床疫学調査に生かしたいものである。
 ところで1ヵ月ほどでギックリゴシは回復し、週に3、4回ジョギングできるまでになった。腰を大事にしつつ第5回臨床疫学調査の結果を見届けるまで現役を続けたい。

平成22年11月13日
吉良潤一