【新たなスタートの時を迎えて: 34年ぶりの新病棟への移転と九州大学病院ブレインセンターの開設(2006年7月)】

  本年3月末に当神経内科は34年間過ごした東病棟4階から新病棟(北病棟)7階に引っ越しをしました。新しい病棟は、広々として患者さんのアメニティーに配慮した作りになっています。 その分、医療スタッフは動線が長くなり大変ですが。以前は6床室で狭い病室でしたが、新病棟は4床室と個室です。 建物はそれこそ日本一と言えるような最新のものになりましたので、あとはスタッフが頑張ってソフトの面でも日本一と言われるような神経内科をめざしたいと思います。


  北病棟2階のホスピタルメインストリートに接する好位置にブレインセンターが開設されました(図)。第III期棟(外来棟)が完成しますと、神経内科・脳神経外科の外来は外来棟2階に入ることが決まっていますので、外来の同じフロアのすぐ隣が北棟のブレインセンターになります。 また病棟へはブレインセンターのすぐ隣にあるエレベーターで7階にあがることができます。現在はまだ従来の外来を使用していますので、外来患者さんがブレインセンターまで行くには距離があって申し訳ないのですが、2年半後にはこの問題は解消されます。

  本ブレインセンターは、脳神経疾患の診療に関係する各科・部が集約して脳神経疾患を総合的、効率的に診療することを目的として設置されたものです。 ブレインセンターには、神経内科、臨床神経生理学教室、脳神経外科、精神科神経科、心療内科、腎高血圧脳血管内科、小児科(小児神経)、耳鼻咽喉科(神経耳科)、放射線科(神経放射線)が参加しているほか、検査部、救急部、総合診療部、看護部等が加わっています。 ブレインセンターは、外来・検査・病棟を含むものですが、当面は、北棟2階のブレインセンター検査部門(図)を中心に運用することになっております。

  ただスペースはもらえましたが、機器はいっさい病院からは購入してもらえませんで、全て自力です。脳磁図(MEG)、128チャンネル脳波計、直流脳波計はリースで、毎年診療報酬のなかから実績に応じて返済していかないといけません(返済後は病院のものになりますが)。 エコーや誘発脳波・筋電図計、磁気刺激装置は神経内科・臨床神経生理等で購入している手持ちのものを持ち込んでいますし、近赤外線分光計は小児科で購入したものの持ち込みです。 また受付は諏訪田さんという女性の方が元気よく対応してくれますが、神経内科の経費で雇用しております。病院全体の脳神経関係の高度検査を担っているわけですが、病院からの資金的な面でのサポートは得られているわけではないので苦労している現状です。 今年12月か来年早々に最新鋭のMEGが入ると、一通り最新の機器がそろうことになります。

  現状のスタッフは、医師は神経内科、臨床神経生理、小児科、腎高血圧脳血管内科から検査に入っています。 神経心理関係、高次脳機能検査関係は、病院雇用で精神科神経科と心療内科に配置されている臨床心理士と神経内科で雇用している臨床心理士が交代であたっています。 また検査部から臨床検査技師が時間を決めて生理関係の検査の手伝いと勉強に来ています。 少しずつではありますが、病院全体をカバーする施設としていっしょに有効利用しようという空気が出てきています。 さらに、九州大学のユーザーサイエンスインスティテュート(科学技術振興調整費・戦略的研究拠点育成事業)や、芸術工学研究院の21世紀COEと共同で、当ブレインセンターで共同研究を推進することが決まっています。 今後さらに大学全体のトランスレーショナルリサーチのコアとなることが期待されます。
  下図にありますように、ブレインセンターには検査部門のほかに、難病情報センターと認知症情報プラザが併設されています。 認知症情報プラザは、平成12年12月より神経内科と精神科神経科とが共同診療を実施している物忘れ外来(週3日)が母体となっています。 開設以来、大八木講師が当外来の診療の責任者として関わっており、認知症患者さんの早期受診・早期診断治療に貢献しています。 同じ患者さんを神経内科、精神科神経科がそれぞれの立場から診察し、全例毎週ケースカンファレンスをもって診断・治療方針を決めています。 このように大学病院で神経内科と精神科神経科が共同で診療する例は全国にも類がないユニークな試みです。 今までは専用のスペースがなく、神経内科外来で実施していたわけですが、今回初めて専用のスペースができたことで一層の充実が期待されます。 神経疾患は、精神疾患の側面を持つことも少なくなく、精神科医師との交流は重要です。 また精神科神経科は外来棟でも神経内科と同じ2階に接して外来が入ることになっており、外来棟完成後はこの点でも相互の意見交換が進むと期待されます。


  難病情報センターには、平成9年12月開設の福岡県重症神経難病ネットワークの拠点病院事務局と新設の福岡県難病相談支援センターが入ります。 福岡県重症神経難病ネットワークは本年で活動が9年目になります。難病コーディネーターの岩木さんが常駐して、筋萎縮性側索硬化症をはじめとする神経難病患者さんの入転院紹介や様々な療養相談、情報提供にあたっています。] 本ネットワークでも全国のそれと同様に重症神経難病患者さんの療養環境整備をめぐり多くの問題を抱えていますが、発足当時の状況に比べると格段に進歩したと思いますし、また本ネットワークが福岡県内で定着してきたと感じております。 一方、福岡県難病相談支援センターについては、かねてより福岡県にはきちんとしたセンター施設(建物)を作って運用していただきたい旨、お願いしてきましたが、 県の予算の関係が大変厳しいことと、福岡県では当事者団体の相談事業が相談センター事業で先行する他都道府県ほどにはアクティブではない面もあることから、当面九大病院の福岡県重症神経難病ネットワーク拠点病院事務局に併設することになりました。 具体的には、メディカルソーシャルワーカー(社会福祉士)1名が常駐して当センターで療養相談や就労相談にあたることになります。本年6月1日開設で当日より社会福祉士の資格をもつ大道さんが勤務についています。 難病相談支援センター事業では、厚生労働省の難治性疾患克服研究事業の121疾患を対象としています。このため、神経系難病30疾患のみを対象としていた福岡県重症神経難病ネットワークと分担して、当面は、従来どおり神経難病は岩木さんが担当し、神経系以外の難病と就労支援関係は、大道さんが担当することとしています。 難病相談支援センターは、地域保健所難病担当保健師、ハローワーク、大学病院専門医がサポートグループとなっています。 両事業は難病患者さんの療養・生活支援の両輪であり、相互に連携していくことが大切です。 大学病院に難病相談支援センターがあるメリットは、難病医療相談・医師紹介に関して専門医の助言を得やすいこと(これは開設以来の相談のかなりの件数が医療相談であったことからも大事な点と思います)、神経難病ネットワーク事業と連携した活動をしやすいこと、などがあると思います。 逆に患者さんからは敷居が高くなりますので、やはり将来的には患者さん・ご家族がアクセスしやすい場所にスペースを確保することが望まれます。


  平成18年8月1日付けで九大病院には救命救急センターが認可・開設される予定です。 当神経内科は脳疾患の救急に積極的に関わっていくことが求められています。 腎高血圧脳血管内科と共同で平成12年より実施している24時間体制の脳卒中ホットラインもすでに多くの実績を積み重ねてきていますが、さらに忙しくなることが予想されます。 ただ、どんなに臨床が忙しくても、やはり大学人としては80%診療でも20%は研究マインドをもち明日の医学を創る姿勢を保ちたいと考えています。


  神経内科の初年時の研修を受けた病棟が閉鎖されるのは、一抹の寂しさがあります。その一方で、新しい病院で21世紀の神経内科医療を切り拓くのだという気概も湧いてきます。 新臨床研修制度になって最初の専門医(後期)研修では、勧誘が大幅に出遅れて今年度の入局者数は半減してしまいましたが、来年度分は既に何人か入局も決まっていますので、なんとか盛り返したいと思っています。 若い人が増えるといいサークルが回り始めて医局・教室も活発化してきます。新しい病院で新しい人を迎えて新しい時代を切り拓いていきたいと念じています。


図1

図2