第55回日本神経学会学術大会の主催と九大神経内科設立50年(2013年7月)】

 


 九州大学神経内科が1963年に設立されて以来、50年となります。初代の黒岩義五郎先生が教授に就任されたのは、1963年9月1日です。半世紀を経て、九州大学神経内科は2014年(平成26年)に5月21日(水)から5月24日(土)まで第55回日本神経学会学術大会を福岡国際会議場・福岡サンパレス・福岡国際センターで主催いたします。九州大学神経内科にとって、大変名誉なことでありますとともに、私自身は伝統ある本学会の学術大会長を務めさせていただくことに大変な重責を感じている次第です。本教室報の巻頭言において、教室・同門の先生方に広くご指導・ご協力をお願いする次第です。

 いうまでもなく私たちの九州大学神経内科は、日本で最初に設立された神経内科であります。1963年に九州大学医学部附属脳神経病研究施設内科部門として、初めて独立した神経内科が我が国でも創設されました。欧米に遅れること約60年。ここから我が国における神経内科の歴史がスタートしたわけです。私たちは、その伝統ある教室の歴史に連なるものとしての誇りをもって、先進的な活動を続けていきたいものです。

 日本の神経学の歴史は、苦難の道を歩んで今日に至っています。我が国では精神科サイドとの関係があって神経内科はなかなか独立することが難しく、福岡の地においてようやく独立した神経内科ができました。第二内科の勝木教授、整形外科の天児教授のご尽力と精神科の桜井教授のご理解のもとで、九大神経内科は設立されたと聞いております。9月の内科部門設置当初は第二内科の病床を借りてのスタートであったということですが、翌1964年6月1日には九州大学医学部附属病院に神経内科が診療科として設置されました。

 我が国の神経内科が欧米に比肩するものとなるためには、内科の片手間では困難で、独立した神経内科を立ち上げ、脳卒中のみならず多様な神経疾患に専門的に取り組むことが不可欠でありました。欧米に凌駕する独立した神経内科を創設するという志のもとに、第二内科と精神科から設立当時のメンバーが参集し、我が国初の神経内科がスタートしたのです。半世紀も経つと設立当時の精神は忘れがちになりますが、私たちはその熱い志を引き継ぐことが強く望まれていると思います。

 ただ大変残念なことに、我が国では神経内科は、いまだに専門医制度の基本領域として位置づけられておらず、内科二階建て部分の13サブスペシャルティーの一つに過ぎません。この点については、神経内科以外の医師・医療関係者や一般市民の方々へ神経内科の意義と置かれている立場の現状の不適切さを訴え続けていくことが望まれます。日本神経学会では、本年度に神経内科フォーラムを立ち上げ、広く神経内科の啓発活動を推進していくことが決まっています。超高齢社会で神経内科の意義は高まるばかりですから、脳卒中、認知症を含めた神経疾患に幅広く取り組んでいることを、国民に広く知っていただくことはとても大切です。

 日本で最初に神経内科を設立された黒岩先生のモットーの一つは、Keep Pioneeringでした。まさに我が国の神経内科のパイオニアとしての志を体現する言葉です。私たちはその神経内科設立の志を受け継ぎ、さらに飛躍させることが期待されています。そこで、第55回学術大会のメインテーマは、この「Keep Pioneering」としました。日本語で「神経内科創設の志の継承と飛躍」との副題を付けています。本学術大会では、神経内科創設の原点に立ち返って、その志を改めて胸に刻み込みたいと考えます。同時に21世紀の神経学を切り拓く私たちは、新たなディメンジョンへのチャレンジを目指したいと願います。伝統に甘んじることなく、絶えず未知への挑戦を心がけることが大切です。創設の志を胸に、新たな発想で飛躍したいと切望します。

 福岡はアジアにも近いことから、九州大学神経内科ではこれまでに多くのアジアの若手神経内科医を受け入れてきました。皆さん、母国に帰ってそれぞれの地域でリーダーとして活躍しておられます。これらの方々にも広くお声がけし、アジアの神経内科医の皆さんにも多く参加していただくことを願っています。このため、International sessionを設け、海外、特にアジアの研究者との学術的な交流が図れるよう計画しています。さらに、アジアの国々の神経内科とのtelemedicineやinternational hands-onなどの新しい取り組みを企画しているところです。

 第55回学術大会では、日本神経学会教育委員会と共同で、学会期間中は連日教育セミナーを実施します。幅広いテーマを取り上げ、日常臨床に役立つコツから最先端の神経科学のエッセンスまで学ぶことができるようにします。生涯教育セミナー、ハンズオン、メディカルスタッフ教育セミナーは、開業しておられる先生方やコメディカルの方が参加しやすいよう全て土曜日(5月24日)に行うことにしました。

 また、学術大会会期中と終了翌日の日曜日は、福岡ブレインフェアとして一般市民向けの展示と市民公開講座を企画しています。九州の神経内科の歴史が一目でわかるコーナーも準備する予定です。このような神経内科を広く市民の皆さんに知っていただく活動はとても大事と考えています。

 さて、福岡市での本学会開催は20年ぶりです。九州での開催は10年ぶりとなります。そこで、第55回学術大会では、学術委員会の中に九州部会を設け、九州・沖縄の神経内科のリーダーに部会に入っていただき、九州らしいイベントを企画することにしました。同門の先生方で何かいいアイデアがございましたら、医局までぜひご一報ください。

 本学術大会ホームページの写真のデザイン(図)は、博多織をもとにしています。博多湾に押し寄せる荒波をモチーフにした福岡国際会議場メインホールの緞帳の博多織の図案に地球儀の東アジアを重ねています。ポスターの基調となるオレンジ色は、九州らしい温かさを表しています。現在の福岡はアジアの玄関口としてますます発展しています。日本からアジア、そして世界へと本学会の力強い発展をイメージしています。福岡での日本神経学会学術大会が、教室ならびに同門の皆さまのご指導・ご支援により大いに盛り上がり、有意義なものとなりますよう、どうぞよろしくお願い申し上げます。


図 第55回日本神経学会学術大会(2014年5月21日(水)〜24日(土))