Enhancement of activation of caspases by presenilin 1 gene mutations and its inhibition by secreatase inhibitors. (2009年7月29日)】


Miyoshi K, Ohyagi Y, Motomura K, Ma L, Sakae N, Kikuchi H, Taniwaki T, Furuya H, Tabira T, Kira J
Journal of Alzheimer’s disease, 16: 551-564, 2009 (Impact Factor= 5.101)
(アンダーラインは当教室関係者)

 

 

解説 (吉良潤一):

 

 この論文は、筆頭著者の三好克枝さんの医学博士号の学位論文で、大学院の4年間を費やした大論文です。三好さんの学位審査のときに、私が会場に行くと誰も来ていなくてとても驚きました。主査、副査あわせて3名の審査員の先生方が会場に到着した後に、三好さんはあたふたと駆け込んできました。それから副査の横溝先生にスライドプロジェクターの準備をしてもらってようやく学位論文のプレゼンができました。学位論文審査に遅れてきて、主査・副査の先生に会場の準備をさせたのは、三好さんくらいですね。主査・副査ともやさしい先生でよかったです。
 この研究は、大八木准教授のアルツハイマー病の神経細胞内にアミロイドベータが蓄積するとの仮説に基づいて、遺伝性アルツハイマー病の原因遺伝子に関する細胞生物学的研究を進めたものです。
プレセニリン1遺伝子変異は若年性家族性アルツハイマー病の主要な原因の一つです。その病的機序として、アルツハイマー病の脳内にたまるアミロイド蛋白の産生増加やアポトーシス死の促進現象が知られています。馬さんは、これら二つの主要な機序のつながりを解明するために、変異プレセニリン1遺伝子(G384AとI143T変異)を導入した2種類のトランスフェクト細胞を作成し、さまざまなタイプのアポトーシスに関わるカスペース酵素活性を測定しました。その結果、G384Aでは酸化ストレス状況下でカスペース9活性が、I143Tでは小胞体ストレスやミトコンドリア傷害状況下でカスペース4活性が上昇しました。さらに、アミロイド蛋白生成を抑制するβおよびγセクレターゼ阻害剤を加えると両者ともアポトーシス促進やカスペース3活性上昇が抑制されました。
  これまでに、プレセニリン1の遺伝子変異は100種類以上報告されていますが、変異型の違いにより異なるアポトーシス経路が促進されるとともに、細胞内アミロイドβ蛋白増加が共通してアポトーシス促進作用をもつことがわかりました。これらのことは、家族性アルツハイマー病の発症機構の多様性を示唆するとともに細胞内に蓄積するアミロイドβ蛋白の重要性を支持しています。

 立派な論文にまとまって本当によかったと思います。三好さんは、現在九州労災病院に勤務していますが、同病院のもの忘れ外来での認知症診療への熱心な取り組みが評価されて、九州労災病院病院長賞を今年受賞しています。重ねておめでとうと申し上げたいと思います。

(平成21年7月29日)