【Near-infrared spectroscopy in carotid artery stenting predicts cerebral hyperperfusion syndrome (2009年8月18日)】


Matsumoto S, Nakahara I, Higashi T, Iwamoto Y, Watanabe Y, Takahashi K, Ando M, Takezawa M, Kira J.
Neurology, 72: 1512-1518, 2009. (Impact Factor= 7.043)
(アンダーラインは当教室関係者)

 

 

解説 (吉良潤一):

 

 この論文は、筆頭著者の松本省二君が小倉記念病院脳神経外科で脳血管内外科手術手技を2年間研修中にまとめた論文です。極めて忙しい脳卒中専門の脳外科で勤務しながら仕上げた研究論文は立派という他ありません。

 頚動脈のステントはわが国でも健康保険で認められて以来、急速に普及してきています。頚動脈の狭窄部位にステントを入れた後には狭窄が解消されるため、ときに過剰に血液が流れる過環流症候群(Cerebral hyperperfusion syndrome, CHS)を生じることがあります。CHSは致命的な頭蓋内出血を引き起こすことがあるので注意が必要な病態です。このため、CHSのリスクのあるものを術後早期に予測し、そのような例ではより厳重な血圧コントロールを行うことが望ましいのです。

 松本君は術後CHSの予測手段として、簡便で非侵襲的な近赤外光測定装置(Near-infrared spectroscopy, NIRS)を用いて両側前頭葉の局所脳酸素飽和度(regional cerebral O2 saturation, rSO2)を測定しました。rSO2は、脳血流が途絶えると低下し、増えると増加します。64例のステントを留置した例でNIRSでの測定を行いました。64例中3.1%でCHSが起こりました。CHS群は全例で、ステント留置後の再環流開始3分後のrSO2が前値より24%以上増加しました。non-CHS群の測定値からこのrSO2の増加は10%までは正常範囲内と考えられました。したがって、頚動脈ステント術後にrSO2が10%以上増加する例では、CHSのリスクが高いと予測できるというのが、この研究論文の結論です。これは臨床的にもとても有用な結論で、このようなハイリスク患者では術後のより厳格な血圧管理が必要といえます。

 Neurology誌は神経内科領域ではトップレベルの臨床ジャーナルです。初めてまとめた英語論文がNeurology誌に採用されたことはとても価値があると考えます。特に一般市中病院からの投稿なので、高く評価できると私は思っています。

(平成21年8月18日)