高木節雄
【インプラント用金属材料部材における結晶粒のナノ細粒化と特性評価に関する研究】

 インプラント用金属材料に限らず構造用金属材料の多くは、大きさが10ミクロンから100ミクロン程度の単結晶の粒(結晶粒)の集合体(多結晶体)であり、結晶粒の大きさ(粒径)は強度や靭性などの機械的特性や耐腐食特性(耐食性)などに大きく影響する。一般的に、粒径が小さいほど機械的特性や耐食性は改善され、現用の構造用金属材料では、粒径を5〜10ミクロンにまで微細化して要求される諸特性を確保している。寸法の大きな構造材料の場合、この程度の粒径で十分な特性が得られているが、人間の体内で使用されるインプラント用金属材料の場合、用途として小さな部材が用いられることが多いので、粒径はさらに微細化することが必要となってくる。例えば、インプラント用マイクロマシンやマイクロデバイスでは数十ミクロンの大きさにまで部品を小型化することが必要であり、このような部材では、部品の中に1個から数個の結晶粒しか存在しないことになり、単結晶金属と大差のない特性しか期待できない(図1)。とくに、塩素イオン濃度の高い人体内では、応力と腐食の相互作用によって引き起こされる応力腐食割れという得意な破壊が生じやすく、部品内に数個の結晶粒しか存在しないような多結晶体では、結晶粒の界面(粒界)が優先的な腐食場所となって応力腐食割れが誘発されることも経験的にすでに知られている。すなわち、ミクロンサイズでの大きさの用途が期待されるインプラント用金属材料では、部品の大きさに対応して材料内部の結晶粒をナノサイズの大きさにまで微細化することが実用化の必要条件となってきており、これまで、粒径をナノサイズの大きさにまで微細化したバルク金属材料の創製は行われていない。
 高木は粉末冶金法を応用した「メカニカルミリング-固化成形」法により、超微細粒組織を有する生体用ステンレス鋼およびチタン合金の開発を行った。本年度開発された材料のひとつである超高窒素微細粒ステンレス鋼の金属組織は、従来の生体用ステンレス鋼(SUS304, 316)に比べて3倍以上の降伏応力を有し、十分な延性も有していた。この材料は2.2mmの結晶粒径を有しているため、20mm程度の微小なサイズのワイヤーや箔に適用してもバルクの特性を失うことなく優れた特性を発現すると考えられる。

図1 生体材料(マイクロパーツ)に要求される金属組織
図1

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