九州大学大学院医学研究院 精神病態医学 各地での活躍

九州大学大学院医学研究院 精神病態医学
九州大学病院 精神科神経科

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更新日 2017-09-27 | 作成日 2008-03-25

  研究活動について

海外便り・各地での活躍

海外便り(本項では海外に留学中の先生方から届いた近況報告を順次掲載していきます)

米国ボストン留学便り

私こと平野昭吾は、本年4月より米国マサチューセッツ州ボストンにあるハーバード大学精神科にて留学生活を開始いたしました。はじめに、今回の渡米にあたっては神庭教授並びに脳生理研究室の鬼塚講師から多大なご厚情とご支援を頂きました。また教室の内外に関わらず多くの先輩方、同僚や後輩達そして友人達が激励してくださいました。
特に本年3月一杯まで勤めさせていただいた飯塚記念病院の豊永院長を始めとした先生方やスタッフの方々からはたくさんの有形無形の励ましを頂きました。また同僚の平野羊嗣先生は私達家族のボストン生活の立ち上げに尽力してくださいました。皆さまからのご支援がなければ、私の渡米は成し得なかったと存じます。この場を借りて皆さまへ心より御礼を申し上げます。ありがとうございました。
さて、現在私は ハーバード大学精神科の一研究室であるNeural Dynamics Laboratoryに所属しています。この研究室はKevin M. Spencer先生がDirectorを勤めておられますが、Spencer先生は精神疾患、特に統合失調症におけるニューラルオシレーション研究の世界的な第一人者でいらっしゃいます。
ニューラルオシレーション研究に強く惹かれる私にとっては、またとない勉強の機会であり、最近は少しずつ脳波データの解析をSpencer先生の指導を仰ぎながら始めたところです。しかし、未知の解析手法を身に付けるには精神医学だけではなく数学やプログラミング等の知識が必須であることが改めて痛感させられています。その手の教科書を読みながら途方に暮れることも度々ですが、焦らずに少しずつ身につけていきたいと存じます。
今は8月の下旬ですが、朝晩はひんやりとして既に秋の気配が漂いつつあります。これからニューイングランド地方は燃え盛るような美しい紅葉に包まれるそうです。
こちらへお越しの際はどうぞお気軽にお声をお掛け下さい。

留学・国際共同研究先

各地で活躍する教室員

 中野三津子   LinkIcon国立成育医療センター
 西 大輔    LinkIcon国立精神・神経医療研究センター
 臼杵理人    LinkIcon厚生労働省
 森 桂     LinkIcon厚生労働省
 松崎 尊信   LinkIcon厚生労働省
 高田 篤    LinkIcon理化学研究所 精神疾患動態研究チーム

勤務地紹介

佐賀県精神保健福祉センター

 佐賀県精神保健福祉センターは、佐賀市から西へ10kmほど行った小城市にあります。小城は「九州の小京都」といわれ、花とホタル、山と滝を楽しめる風光明媚でのどかな町です。当センターは日本歴史公園百選にも選出された小城公園の隣に位置し、県民の皆様が足を延ばして訪れてみたいと思う処にあります。
当センターには、精神科医師(所長)1名、保健師4名、心理判定員1名、事務職員2名、非常勤嘱託精神科医6名、電話相談員2名がおり、常勤スタッフは1名を除いてすべて女性という華やかな職場で、いつも優しい笑顔と明るい声に包まれながら、県民の皆様の「こころの相談」を受け、各地で「こころの健康づくり」に関する講演活動を広げております。特に、「ギャンブル依存症対策」で全国のトップを行く所で、「自殺対策事業」の一環として熱心に取り組んでいます。
これまで九州大学精神科同門の先生方にもご指導をいただいてまいりました。また、「精神障害者保健福祉手帳・自立支援医療支給認定審査会」、「精神医療審査会」、「精神保健福祉審議会」、「精神保健福祉協会」、 「精神科病院協会」、「自殺対策協議会」、「犯罪被害者救済(VS)協議会」などの各種事業でも、九州大学精神科同門の先生方に多大なるご尽力を賜っております。 
これからも、県民の皆様の「こころの健康の増進」を目指して、スタッフが一致団結して実りある活動を次々に展開できますよう、生き生きと明るい職場作りを心がけたいと存じます。

佐賀県精神保健福祉センター所長 峯田 聖

独立行政法人国立病院機構 災害医療センター 

 国立病院機構災害医療センターは、東京駅から中央線で西へ30kmほどの立川市に位置する、北部多摩地区を代表する地域拠点病院です。三次救急の受け入れを盛んに行っているだけでなく、災害の名からも想像されるように日本DMAT(Disaster Medical Assistance Team)の本部があることでも知られています。今後は災害派遣精神医療チーム:DPAT(Disaster Psychiatric Assistance Team)とも連携し、更に幅広い災害医療が行われていくことになるでしょう。
かつて精神科常勤医は一名しかおりませんでしたが、九大から西大輔先生が派遣されて以降は臨床と研究の両分野にて活動を拡げ、今では精神科常勤医三名、非常勤医二名、非常勤心理職四名が在籍しています。
我々は、「二つの橋渡し」を大目標として活動を続けています。一つはコンサルテーション・リエゾン精神医学の拠点としての、身体科と精神科の橋渡し。もう一つは、TR(translational research)の拠点としての、臨床と研究の橋渡しです。特に、国立精神・神経医療研究センタートランスレーショナルメディカルセンター部長の松岡豊先生と、同精神保健研究所精神保健計画研究部システム開発研究室長の西大輔先生との連携の元、PTSDの予防法開発に関する研究や、災害援助者・医療従事者のメンタルストレスに関する研究などで成果をあげています。
私は社会人大学院生として災害医療センターへ派遣された後、H26年度から医長を拝命致しました。当院で蓄積された貴重な臨床研究の知見は、多くの医学論文を生み出す土壌ともなっています。もし、当院での研究や貴重な臨床経験に携わってみたいとお考えの方がいらっしゃいましたら、遠慮なくご相談下さい。
最後になりましたが、当院での活動に多大なご理解とご支援を頂いております神庭教授と川嵜准教授をはじめとした諸先生方に、深く御礼申し上げます。

独立行政法人国立病院機構 災害医療センター精神科 医長 臼杵理人

理化学研究所 脳科学総合研究センター 精神疾患動態研究チーム

 私は現在、神庭重信教授のご厚意により、九州大学精神科・分子遺伝学研究グループに大学院生として所属しながら、埼玉県和光市の理化学研究所・脳科学総合研究センター(理研BSI)の精神疾患動態研究チームにて、加藤忠史先生のご指導のもと、双極性障害の病態解明を目指した研究を行っております。
 和光市といっても九州の方にはあまり馴染みがないのではないかと思いますが、最も東京都寄りの埼玉県に位置し、池袋まで急行で約12分、2008年に開通した副都心線を使えば新宿・渋谷にも乗り換えなしで行けるなど、都心へのアクセスも良好でありながら、自然も多く残っており、なかなか過ごしやすい街となっています(マンションの宣伝のようになってしまいすみません…)。
 理研BSIは、その名の通り脳科学の総合的な研究所で、医学・生物学だけでなく、物理学・工学・情報科学・数理科学・心理学などの、多彩な学問分野を背景とした、融合的・領域横断的な脳研究が行われています。
その中で、当チームでは、双極性障害におけるミトコンドリア機能障害の検討と、精神疾患のエピジェネティクス解析の2つを主要な課題としており、私は、ミトコンドリア機能障害仮説に基づいて作製された双極性障害モデルマウス (Kasahara et al. Molecular Psychiatry 2006) において、①異常なミトコンドリアDNAが蓄積している脳部位を同定する。②異常なミトコンドリアDNAがもたらす機能変化を明らかにする。③マウスでの所見を反映するような現象が双極性障害患者でも認められるかどうかを検討する。といったことを目指して研究を行っています。
 基礎研究で得られた知見が臨床の場に還元されるまでの道程は遠く厳しいものですが、将来、患者さんに何か良い影響を与えられるような成果を目指して、精進して参りたいと思います。また、理研BSIでの研修にあたり、多大なご支援及びご理解を頂きました、神庭教授、川嵜准教授をはじめとした諸先生方に、心より感謝申し上げます。


理化学研究所 脳科学総合研究センター
精神疾患動態研究チーム 高田 篤

国立精神・医療研究センター

 私は2012年から、東京都小平市にある国立精神・神経医療研究センターに研究職として勤務しています。
国立精神・神経医療研究センターには、総合大学のような広いキャンパスのなかに、病院、神経研究所、精神保健研究所、トランスレーショナルメディカルセンター、認知行動療法センター、脳病態統合イメージングセンターという6つの組織があります。私が所属している精神保健研究所は11の部と2つのセンター(自殺予防総合対策センターと災害時こころの情報支援センター)から構成されており、私はそのなかの精神保健計画研究部で室長を務めています。
精神保健計画研究部で行われている研究は、①精神保健福祉の現況と施策効果のモニタリング(モニタリング研究)、②精神保健福祉施策の重要課題の解決方策を得るための情報収集と分析(政策情報研究)、そして③精神保健・精神科医療の科学的根拠を充実させるため疫学・臨床研究に大別されます。
私が主に取り組んでいるのは③で、現在は妊婦の精神健康に関する研究と、産業精神保健に関する研究に力を注いでいます。また、前職の災害医療センターのときに行っていた身体外傷患者の精神健康に関する研究や、東日本大震災の救援者の精神健康に関する研究、レジリエンスに関する研究等にも継続して携わっています。
さまざまな研究に取り組んでいますが、すべての研究に共通するテーマは予防です。前職で自殺を図った方々を毎日のように診察していたことや、産業保健の現場での経験などから、予防の重要性を強く感じたことが現職に異動した一つの要因でした。これからも精神疾患の予防に貢献できるような研究・活動を続けていきたいと願っています。
小平は都心から少し離れておりますが、上京される際にはぜひお立ち寄りいただけましたら嬉しく思います。今後とも、ご教導の程、どうぞよろしくお願いいたします。

国立精神・医療研究センター
精神保健研究所 精神保健計画研究部 西 大輔

厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部精神・障害保健課

私は現在、神庭重信教授のご厚意並びに医局のご配慮により、厚生労働省の人事交流制度を利用して、厚生労働省の精神・障害保健課に勤務しています。精神・障害保健課では、依存症対策専門官として、精神保健福祉行政の幅広い課題に取り組んでいます。具体的には、「入院医療中心から地域生活中心へ」という大きな方向性の下での地域移行や病床の機能分化、災害等の被災者の心のケア、自殺対策、アルコールや薬物などの依存症対策、診療報酬、厚生労働科学研究のマネジメントなど、多岐に渡ります。これらの課題に対して、法律、予算などを担当するスタッフと連携して業務を進めています。

多くの業務の中でも特に重要な業務の一つは、国会対応です。国会は国民の生活に影響する法律や予算など大切な事柄を決定するところですが、自分の担当した答弁が国会でやりとりされるのを目の当たりにすると、国の政策に大きく関わっているという実感を抱きます。このように人事交流を通して、得がたい貴重な体験をさせていただいています。

最後になりましたが、多大なご支援及びご理解を頂きました、神庭教授、川嵜准教授をはじめとした諸先生方に、心より感謝申し上げます。

厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部精神・障害保健課
松崎尊信

厚生労働省医政局医事課

 私は現在、神庭教授並びに医局のご配慮により、医系技官として厚生労働省に勤務し、保健医療行政に携わっております。官庁街である霞ヶ関に位置する厚生労働省は、社会保障政策から労働政策まで、多岐にわたる行政分野を所管しています。その中で医系技官は、医師としての専門知識を持ち、保健医療に関わる制度作りを行う技術系行政官として、事務官や多職種の技官と協力しながら業務を進めています。医師としての専門性はもちろん、行政官としての専門性も求められます。現場の問題意識を出発点に、アイディアを制度という「かたち」にしていくには、エビデンスの収集から専門家における検討の場の構築、議論、合意形成、省内外の調整、財務省への予算要求、マスコミや議員への説明等々、多面的多層的な対応が求められます。

精神医療・精神保健に関しては、障害福祉部精神・障害保健課が中心となって他部局と連携しながら課題に取り組んでおり、九大からも同門の先生方が人事交流として派遣されています。一方、私自身はこれまで、健康局、保険局、医政局等をまわり、現在は臨床研修を主に担当しておりますが、例えば医政局では医療提供体制の構築の中で、精神疾患を医療計画に位置付けたことや、保険局では診療報酬における精神医療の評価等、様々な政策の中で精神医療や精神保健の視点が求められています。

我が国の風土、共同体に根ざした制度作りを通じて、ここに暮らす一人一人が自尊心を持って生きることができるためのお手伝いをする。行政に届く大きな声だけではなく、声なき声にも耳を欹て想像力を働かせる。これらは、短い期間ながらも精神科の臨床でご指導いただいた先生方から学んだものであり、ここ行政においても大変役に立っております。臨床や研究とは違うアプローチをと飛び込んだ世界ですが、これからも微力ながら尽くして参りたいと思います。最後に、このような進路にご理解いただいております神庭教授、川嵜准教授を始めとした諸先生方に心から感謝申し上げます。

厚生労働省医政局医事課 森 桂