文部科学省科学研究費特定領域研究「性分化機構の解明」 *

領域活動

第3回 冬のワークショップ開催報告

2008年3月3日(月)-5日(水) 静岡県御殿場市

第3回 冬のワークショップに参加して(敬称略)

吉田松生・杉本幸彦 / 山本 友里恵 / 野殿 英恵

野殿 英恵(慶應義塾大学大学院理工学研究科)

 2008年3月、御殿場高原「時の栖」にて開催された第3回冬のワークショップに参加しました。私は昨年第2回からこの性分化の集まりに参加しています。昨年秋の領域会議ではタイムキーパーとして特等席で発表を聴くことができました。発表内容のみならず、プレゼンテーションの巧みさや分野の違う先生同士の熱い議論など、その場にいて初めて学べることが数多くありましたが、分野によっては理解が追いつかない場合もありました。一方、ワークショップでは若手の先生方が趣向を凝らして企画して下さり、私のような丁稚見習いの勉強と交流の場として有意義なものとなっています。

 参加を重ねるにつれ、初日に会場に着くと「久しぶり!その後の研究はどう?」と再会を喜べる顔が増えました。この集まりは年齢も研究内容も多様な研究者が、性や生殖というテーマに大いなる興味を抱いて研究に邁進しているという共通項で一堂に会し、議論や情報交換をし、刺激し合える素晴らしい場です。特に毎晩盛況の懇親会では幅広いお話ができました。学生の口からぽろっと出た「人の役に立つ研究がしたい」という一言から、医師として人の症例を扱う先生、基礎研究をなさっている先生のそれぞれの視点から考える研究の意義について伺えました。また研究者としての心構えについても、退路を断って覚悟を決めるという方と、逃げ道を用意しておくという方がいらっしゃり、扱う生物の多様さに負けないくらい研究する側も多様だと感心しました。

 今回は自分の研究分野に近い「無性生殖、有性生殖とオスメスの分化」と幹細胞に関わる発表が特に興味深かったです。様々な生物の性と生殖について、基礎から最新の研究内容まで分かりやすく教えていただきました。その他の普段あまり接していない分野の発表についても、予習用の資料を用意していただいたおかげで従来よりも理解できたと思います。しかしながら実に多岐にわたる研究について活発な議論を繰り広げられるよう、もっともっと修行しなければ!!と思いを新たにしました。またマスターズレクチャーでは、多くの先生方が「自分は発展途上。」とおっしゃり、そのパワーには恐れ入りました。駆け出しの頃から今までの道のりを、堅い感じではなく裏話を交えて振り返るという企画は滅多に無く、とても参考になりました。また長濱 嘉孝先生のレクチャー後には退職記念の花束贈呈のサプライズがあり、大きな家族のような温かい集まりだなぁと感じました。

 私自身は「プラナリア先天的有性系個体と人為的有性化個体の比較」という題目でポスター発表をしました。次のセッション直前までの2時間半、ひたすら話し続けました。修士2年の知識や経験では周りの先輩方にかなわないけれども、研究の結果や面白さ、オリジナリティについては誰よりも自分が一番知っているのだから、その点は胸を張って伝えよう、そして若輩者の強みとして失敗を恐れずにいこうと臨みました。その結果、面白い、熱意が伝わったという言葉をいただきとても嬉しかったです。また、きちんと答えられなかった質問もあり、相手を納得させられるデータを揃えること、それをきちんと使いこなして伝える腕、の双方が足りないと痛感しました。そして研究の進め方や手法についてのアドバイス、新たな視点からのアプローチなど、参考になる意見を多数いただけたことが何よりもためになりました。以上で大満足していたのですが、思いがけず入賞し、口頭発表の機会もいただきました。まさか人生初のポスターで受賞するわけがないと思い、事前にほとんど準備しておらず、実は口頭発表は一夜漬けでした。発表は落ち着いていたという言葉をいただきましたが、準備不足の露呈した発表と質疑応答だったと反省しています。錚々たる先生方の前での発表という折角の大チャンスに万全を期せなかったことは心残りですが、この経験をバネにし、次こそは満足のいく発表をしたいです。

今回のワークショップは実に濃い3日間でした。興味深いセッションを展開して下さった先生方、討論して下さった方々、そして本ワークショップを企画・運営して下さった方々に深く感謝いたします。

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