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トピックス
新規尿道下裂発症責任遺伝子MAMLD1 (CXorf6) の同定と機能解析 われわれは、隣接遺伝子症候群のデータに基づいて、X染色体長腕遠位部に存在するCXorf6 (Chromosome X open reading frame X) が尿道下裂を主とする性分化異常症責任遺伝子候補であることを見いだした。その後、CXorf6が尿道下裂発症責任遺伝子であることを明確にし、HUGO Nomenclature Committeeとの協議により、MAMLD1 (Mastermind like domain containing 1)と命名した。その経緯およびその後の進展について紹介したい。 変異および臨床像解析 われわれは、166例の外性器異常症患者において変異解析を行い、4例の尿道下裂患者においてナンセンス変異を同定した(図1)(その後、スプライス変異を同定している)。そして、これらナンセンス変異体がnonsense mediated mRNA decayを受ける無機能型変異であることを見いだした。これらの患者は、6歳以前は正常テストステロン分泌を示したが、その後、テストステロン産生低下を有していた。
MAMLD1マウス相同遺伝子発現解析 マウス相同遺伝子は、胎児性決定臨界期の精巣ライディッヒ細胞とセルトリ細胞、および、成獣期卵巣顆粒膜細胞で強く発現していた(図2)(諸橋教授および山田教授による)。この成績は、胎児期特異的男性ホルモン分泌不全が尿道下裂の原因であることを示唆すると共に、変異陽性女性で卵巣機能が障害される可能性を示唆する。事実、われわれは、卵巣機能不全を有する女性78例の解析を行い、3例においてミスセンス変異、2例において1アミノ酸欠失を同定している(未発表データ)。 ノックダウン実験 マウス相同遺伝子のノックダウン実験を、マウスライディッヒ細胞腫瘍細胞を用いて行った。内在性マウス相同遺伝子が30%程度に抑制されたとき、テストステロン産生は50-60%に低下していた(図3)。これは、MAMLD1がテストステロン産生に関与することを示すとともに、不完全なテストステロン分泌低下が尿道下裂を招くことを明確にするものである。
転写活性化経路 MAMLD1コード領域上流にはAd4BP/SF1蛋白結合配列が存在する。そこで、ゲルシフトアッセイとルシフェラーゼ活性を検討したところ、Ad4BP/SF1蛋白がMAMLD1のプロモーターに対し、転写活性化作用を及ぼすことを確認した(図4)。次に、MAMLD1の標的分子の同定を試みた。その結果、われわれは、MAMLD1蛋白が、古典的Notchシグナル経路共役因子、Mastermind like 2 (MAML2)蛋白と相同性を有し(図5)、核内PML小体において共存することを見出した(図6)。そして、ルシフェラーゼ法により、MAMLD1が古典的Notchシグナル経路の標的分子であるHes1, Hes5ではなく、非古典的Notch標的分子であるHes3のプロモーターを活性化することを明らかとした(図7)。また、ヒト精巣において、Hes3の発現が確認された。以上の成績は、MAMLD1が、最近ヒトとマウスにおいて同定された非古典的Notch経路の構成因子である可能性、そして、この非古典的Notch経路が正常性分化に必要であることを示唆する。
今後の展望 MAMLD1に関しては、多くの課題が残されている。現在、われわれは、以下のことを実施している。(1) マイクロアレイにより、ノックダウン細胞において発現が大きく変動する遺伝子を同定する。(2) 既に作製したノックアウトマウスの表現型を解析すると共に、性腺において発現が大きく変動する遺伝子を同定する。(3) MAMLD1プロモーター領域にダイオキシン反応性エレメントが存在することから、内分泌撹乱化学物質に幕吏されたマウスを用いて性腺のメチル化と発現パターンを解析する。 |
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