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 研究目的

ライディッヒ細胞は精巣の間質に存在し、男性ホルモン（テストステロン）の産生・分泌を通じて種々の組織の雄性化を促進する。哺乳類では、胎生期に出現するライディッヒ細胞（胎仔型ライディッヒ細胞）と出生後に出現するライディッヒ細胞（成獣型ライディッヒ細胞）は、形態的に明らかな差異を示すが、両者の細胞系譜や分化メカニズムは全く明らかにされていない。また、特に胎仔型ライディッヒ細胞は哺乳類でのみ認められ、その生物学的な機能は全く解明されていない。一方、核内受容体型の転写因子であるAd4BP/SF-1は生殖腺の発生に不可欠な因子で、精巣では胎仔型ライディッヒ細胞と成獣型ライディッヒ細胞の両者に発現する。我々は最近、それぞれの細胞でAd4BP/SF-1遺伝子の転写が異なるエンハンサー領域によって制御されていること、すなわち胎仔型および成獣型ライディッヒ細胞がそれぞれ異なるエンハンサーを選択的に使用することを明らかにした。本研究では、胎仔型ライディッヒ細胞を特異的に欠損するマウスの解析を通じて、胎仔型ライディッヒ細胞の生物学的機能を明らかにすると同時に、各発生段階における胎仔型ライディッヒ細胞の遺伝子発現プロファイルを解明することにより、細胞の生物学的機能を担う分子メカニズムを明らかにする。

 研究計画、方法

胎仔型ライディッヒ細胞の生物学的な機能を明らかにするために、本研究計画において2つの実験を推進する。

第一に、我々は既に樹立した胎仔型ライディッヒ細胞特異的Cre組換え酵素発現マウスを用いることにより、細胞特異的にAd4BP/SF-1遺伝子を破壊し、胎仔型ライディッヒ細胞が欠損したマウスの表現型を解析する。本解析により、生体における胎仔型ライディッヒ細胞の存在意義、すなわち生物学的な機能が明らかになると期待される。

第二に、同様に既に樹立した胎仔型ライディッヒ細胞特異的EGFP発現マウスからソーティングによって細胞を回収し、マイクロアレイ解析により遺伝子発現プロファイルを明らかにする。各発生段階の胎仔型ライディッヒ細胞を解析することにより細胞の分化の過程を明らかにすると同時に、成獣型ライディッヒ細胞における遺伝子発現パターンとの比較・解析により胎仔型ライディッヒ細胞を特徴づける遺伝子の発現パターンを明らかする。

これら2つの実験結果を統合して解釈することにより、胎仔型ライディッヒ細胞の生物学的機能を総合的に理解できるものである。