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体腔鏡下副腎摘除術について

1 副腎腫瘍の治療について

副腎腫瘍は大きく分けて様々な副腎由来のホルモンを過剰に分泌するホルモン活性型副腎腫瘍とホルモンを過剰に分泌しないホルモン非活性型副腎腫瘍があります。 

副腎腫瘍は大きさが5 cm未満の場合、ほとんどが良性腫瘍です。しかし、ホルモン活性型副腎腫瘍はその分泌するホルモンによって様々な症状を呈することより手術の適応となります。

ホルモン非活性型副腎腫瘍の場合は経過観察をすることがありますが、時間の経過とともに腫瘍径が大きくなるものは手術をお勧めすることがあります。どれくらいの大きさから手術を行うかといった明確な基準はありませんが、患者様ご本人の希望も含めて手術を行うかどうか考慮します。一方で5 cmを超える大きさの腫瘍は悪性の可能性を否定できませんから手術をお勧めします。手術に関しては以下の方法があります。

1.体腔鏡下副腎摘除術

2.体腔鏡下副腎部分切除術

3.開放手術による副腎摘除術      

1については内視鏡を用いて副腎と腫瘍を摘除する術式です。利点として手術創が小さくて済み、術後の疼痛が少なく、回復も早いです。現在の副腎腫瘍の術式の主流を占めています。欠点としては腹部の手術既往があると手術時間が長時間にわたる事や、臓器損傷や出血を起こす可能性が存在し、その場合開腹手術への移行や、術後合併症として問題になることがあります。また、悪性腫瘍の可能性が高く、大きな副腎腫瘍の場合は本術式の適応とはならない場合もあります。最近では、より美容上も優れる単孔式腹鏡下副腎摘出術も行ってきました。

2については副腎腫瘍が比較的小さく正常副腎との区別が明確な場合や、両側副腎腫瘍の場合に適応となります。副腎機能を可能な限り温存できる利点がありますが、再発する可能性が数パーセントから数十パーセント報告されています。合併症に関しては体腔鏡下副腎摘除術と同様です。

3については体腔鏡下副腎摘除術では摘出が難しい副腎腫瘍が適応となります。具体的には悪性腫瘍の可能性が高い大きな副腎腫瘍の場合や、両側副腎腫瘍で同時に摘出する場合などが適応となります。手術創が比較的大きくなるため、術後疼痛が強かったり離床が遅れたりします。内視鏡手術同様に臓器損傷や出血を起こす可能性はあります。

2 体腔鏡下副腎摘除術とはどのような手術か

 1.全身麻酔にて行います。術中の麻酔の補助、術後の痛みを和らげるため背中から硬膜外麻酔用のチューブを入れることもあります。

2.体位は側臥位(横向き)で行います。右副腎に病変がある場合は右側を左副腎に病変がある場合は左側を上にします。

  • トロカールという内視鏡や鉗子を通す管を腹腔内に挿入します。一つの穴の大きさはだいたい1.2 cm以下です。このトロカールを3〜4本挿入します。(単孔式手術の場合は、へそあたりに2〜3pの傷ができます。)
  • 二酸化炭素ガスを用いて腹腔内を膨らませて内視鏡カメラで観察しながら鉗子を操作して周囲臓器に気をつけながら副腎を周囲組織と剥離し、血管をクリップで挟みながら腫瘍の存在する副腎を一括して遊離します。
  • 摘出用のビニール袋に遊離した副腎を入れ込み、穴から副腎を引っ張り出します。この時穴が小さすぎれば皮膚切開を追加します。
  • 副腎床にドレーンという排液管を留置し、出血や臓器損傷のないことを確認のうえ手術を終了します。
  • 手術時間は平均2〜3時間で麻酔時間を入れると通常3〜5時間で手術室から戻ってきます。
  • 手術当日は、酸素吸入、点滴がされます。ベッド上安静で歩行、食事はできません。
  • 手術翌日(1日目)から2日目には状態に応じて、飲水、食事、歩行が可能となります。歩行が可能になれば尿道に留置されているカテーテルは抜去します。
  • 術後ドレーンからの排液が減少すれば抜去します。術後約1週間で抜糸しますが、術後のホルモン補充や特殊検査のため退院が延びることもあります。

3 合併症とその対応について

(1)出血

ほとんどの場合、体腔鏡下副腎摘除術において、出血は少量で済み輸血を行う例は少数です。しかしながら、時に血管の損傷による不慮の出血をきたすことがあります。このため、念のため輸血を行う準備をして手術に臨みます。また内視鏡操作による止血が困難な場合に開放手術に移行し、止血を試みることになります。

(2) 臓器損傷

副腎を摘出するにあたり周囲を剥離する必要がありますが、その操作の過程で癒着などの様々な原因で臓器損傷を起こすことがあります。副腎周囲臓器が対象になりますが、具体的には腸管、膵臓、脾臓、肝臓、横隔膜が挙げられます。いずれの場合も術中に判明すれば修復を試みます。内視鏡操作で修復困難な場合は開腹手術に移行する場合があります。しかしながら、術中の詳細な観察にも拘らず、まれに手術中臓器損傷が確認できず、術後に判明することがあり、緊急手術が必要となることがあります。

(3) 副腎ホルモンに起因する諸症状

種々のホルモン活性化型腫瘍の摘出前後ではそのホルモンの薬理作用による症状を起こすことがあります。

褐色細胞種の場合、カテコラミンという昇圧作用のあるホルモンを分泌するため、摘出時に腫瘍細胞よりこのホルモンが大量に分泌され、重篤な術中高血圧をきたし、それが脳出血や心不全などの合併症を起こすことがあります。また、逆に摘出後は低血圧をきたして麻酔管理が困難なことがあります。これらについては術前から薬剤を用いて血圧や循環血液量をあらかじめコントロールすると共に術中は麻酔科の先生がそのような状況を想定して麻酔管理を行っていく対策を講じていますが、前述した脳出血や心不全などの重篤な合併症が必ず回避できるものではありません。

副腎皮質ホルモン(ステロイド)を分泌するクッシング症候群のような腫瘍の場合は、腫瘍によって副腎皮質ホルモンが過剰分泌され、反対側の副腎機能が著しく抑制され、摘出後に低血圧、脱力、倦怠感、食欲不振などの症状をきたすことがあります。これに対しでは術中からステロイド製剤を補充投与して急性の副腎不全に備えています。ホルモン分泌のないホルモン非活性型副腎腫瘍ではこのような事態は起こらないと考えます。

(4) その他

その他、起こりうる合併症として、術後の腸の蠕動運動が一時的に麻痺して食事開始が遅れる状態(麻痺性腸閉塞)や、感染で創が開いたり、筋膜が開いて創ヘルニア(創の部分が飛び出す状態)になったりすることがあります。また、術後性肺炎や無気肺(肺の一部に空気が入らなくなる状態)発症したりすることもあります。これらのなかには再手術が必要な場合もあります。また、足の静脈に血栓ができ、手術後にこの血栓が肺の血管を閉塞する重い合併症(肺梗塞)の危険性もあります。以上のような合併症が起きた場合、診断がつき次第、直ちに適切な処置を行います。まれな合併症ですが死に至る場合もあります。

4 今回の治療の根治性と再発時の治療について

大部分の副腎腫瘍は良性で、摘出することで再発することはまれです。しかしながら褐色細胞腫の場合、反対側の副腎や異所性(副腎以外の場所)に再発することが10%程度の割合で存在します。この場合、再発腫瘍を外科的切除する必要がありますが、反対側の副腎に再発した場合は、副腎の部分切除(腫瘍のみ摘除し正常と思われる副腎組織を残す術式)を行う場合があります。悪性腫瘍の場合は再発する可能性が少なからずあるので注意深い観察が必要です。



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