スタッフ紹介
診療内容
病気と向き合う
よくあるご質問
トピックス
リンク集
西日本泌尿器科
文献
トピックス
トピックス
腹腔鏡下腎部分切除術について

 

腎腫瘍の治療法について

画像上、悪性腫瘍が疑われる場合、一般的には根治的腎摘除術といって、病気のある片方の腎臓全てと周囲の脂肪組織を一塊として摘出する手術で治療を行います。しかし、腫瘍が比較的小さく、腎臓の辺縁(中心ではなく腎臓のまわり)から突出するような形態の場合は、片方の腎臓全てを摘出せずに、腫瘍とその周囲のみ切除して、病気の腎臓を温存する方法もあります。これが、腎部分切除術です。また、片方しかない腎臓に腫瘍がある場合や、左右両方の腎臓に多発性の腫瘍がある場合にも、この術式が選択されることがあります。

腎部分切除術とはどのような手術か

腎部分切除術は、腫瘍とその周囲という腎臓の一部のみを切除し、腫瘍のある腎臓を残し、腎臓の働きを温存するための術式です。

麻酔は全身麻酔で行います。開腹の方法はさまざまあり、これは体腔鏡を使用するかどうかによって傷の大きさや位置が異なるため、手術説明時に詳しくお話します。場合によっては、手術の際の視野を確保するために、肋骨を切断することもあります。

手術は腫瘍の確認と腎臓の剥離から始めます。腫瘍の位置や深さを外見と、場合によっては術中エコーによって確認します。そして腎臓の周りの組織を剥がしながら、腎臓の血管(動脈、静脈)を見つけて確保します。腎臓は血管の塊りのような臓器ですので、腫瘍を切除する時は、出血を抑えるため、動脈にクリップをかけて一次的に阻血して手術を行う場合が一般的です。しかし、阻血時間が余りに長いとせっかく残した腎臓の働きが低下する恐れがありますので、切除に長時間かかると思われるときは、腎臓を氷で冷やして、腎臓を保護することもあります。腫瘍を切除したのち、切除面を縫合し、出血や尿の漏れを防止した後、クランプをはずし、血流を再開します。この際、出血があれば、再度止血を追加します。

開腹による腎部分切除術との違い

  1. 皮膚を切開する代わりに、トロカーと呼ばれる筒状の器具を入れる5mmから12 mmの穴をあけ二酸化炭素でお腹を膨らまして手術します。また、用手補助といって、8cm程度皮膚を切開して、術者の片手のみ腹部に入れて、内視鏡手術を行う場合もあります。
  2. 手術操作は内視鏡の拡大視野で行うため、より細かな操作が可能です。通常、出血量も少なくなります。基本的な手術内容は通常の開腹手術と同じですが時間は長くかかる傾向があります。
  3. 通常術後の回復は早くなります。
  4. 手術時間は平均3〜5時間で麻酔時間を入れると5〜7時間で手術室から戻ってきます。
  5. 入院期間は、通常術後約10日間となります。

体腔鏡下腎部分切除術の長所

  • 皮膚切開が小さく術後の痛みが少ないと思われます。
  • 内視鏡で見ながら細かく丁寧な手術操作をしますので出血量が少なくなる場合がほとんどです。

体腔鏡下腎部分切除術の短所

  • 体腔鏡手術では、開放手術より手術時間が長くなる傾向があります。また、大出血が起こった場合、開放手術より止血に手間取ることもあります。
  • 体腔鏡手術では、操作が難しい場合や、出血、他の臓器の損傷などのために開放手術に変更しなければならないことがあります。腹腔鏡手術では難しいと考えられるときには、すぐに開放手術に切り替えることが、安全に手術を終えるために大切です。

予想される合併症とその対応について

  • 出血:輸血、開放手術への変更が必要な場合があります。
  • 他臓器の損傷:胆嚢、脾臓、膵臓、腸などを術中に傷つける可能性があり、その場合にはそれらの臓器の摘出を含め、適切に処置しなければなりません。開放手術への変更が必要になる場合もあります。
  • 術後の腸閉塞:術後に腸が癒着し、再手術が必要になることがあります。体腔鏡手術では開放手術よりこの合併症は起こりにくいと思われます。
  • 術後の腹膜炎:小さな腸の傷に気がつかなかった場合、後で腹膜炎となり、再手術が必要になる場合があります。
  • 術後の創感染:傷の縫い直しが必要になることもあります。開放手術より体腔鏡手術では起こりにくいと考えられます。
  • 創ヘルニア:傷の下の筋膜がゆるんで、腸が皮膚のすぐ下に出てくる状態で、再手術が必要になることがあります。開放手術より体腔鏡手術では起こりにくいと考えられます。
  • 気胸:肺を包む胸膜に傷が付き、肺の周りに空気が入った状態です。胸部に管を入れる操作が必要になることがあります。
  • 術後の肺梗塞:おもに足の血管の中で血液がかたまり、これが血管の中を流れて肺の血管を閉塞する、重大な合併症です。まれな合併症ですが、死に至ることがあります。この合併症を予防するために、手術中には下肢に弾力性のある包帯を巻いていますが、術後もできるだけ早く歩行していただくことが大切です。
  • 腎機能低下、廃絶:温存した腎臓の働きが期待したほど保てず、働きが低下したり、機能が廃絶することもあります。ただし、反対の腎臓が正常に機能していれば、今までの生活には支障はありません。

以上の合併症は開腹による通常の腎部分切除術の場合とほぼ同様です。


体腔鏡手術に特有の合併症

  • 皮下気腫:二酸化炭素が皮膚の下にたまって不快な感じがすることがありますが、数日で自然に吸収されます。陰嚢が膨らむこともありますがすぐによくなります。
  • ガス塞栓:二酸化炭素が血管の中に入って肺の血管が通らなくなるもので、まれではありますが危険な合併症です。
  • 創部への癌の転移:体腔鏡手術では、癌の組織を取り出すときに創に転移が生じたとの報告が、まれにあります。


緊急開腹について

手術中対応できない大出血や、大きな臓器損傷を生じた場合には開腹手術へ移行します。体腔鏡下腎部分切除術を行うに際しては、いつでも開腹手術に移ることができるように準備して行います。

治療の根治性と再発時の治療について

摘出した腫瘍の進行が軽度であった場合、外来でCTスキャンなどにより定期検査を行います。腎臓の悪性腫瘍(癌)は10年以上経って転移が出現することもあり、長期間の経過観察が必要です。

また、腫瘍が進行している場合は手術後に免疫療法(インターフェロンの注射など)などの術後補助療法が必要になることもあります。

一般的に、腎癌の予後は病気の進行度によって異なります。腎部分切除を受けられる患者さんのほとんどは、T1 Stage(大きさ7cm以下)で転移のない方なので、予後は良好で、5年生存率は90%以上です。

ページの先頭へ戻る
 
〒812-8582 福岡市東区馬出3-1-1 九州大学大学院医学研究院泌尿器科学分野 092-642-5615(外来)
九州大学大学院医学研究院泌尿器科学分野 サイトマップ トップページ