基準範囲と臨床判断値について
2014年4月に、日本人間ドック学会より150万人のデータを基に作成した検診基本検査の「基準範囲」を策定されました。
日本国内の診療の場で使用できる共用基準範囲が日本医師会の賛同を得て、JCCLS(日本臨床検査標準協議会)から公開され、福岡県医師会が福岡県共通基準範囲としてこれを採用したことに準じ、本院も2014年11月より基準範囲の変更をしました。
「基準範囲」と「臨床判断値」は設定方法や定義が全く異なるので、医学的に全く違う指標であり、日常診療での使用意義は全く異なるものであります。
従来、臨床判断値を上限としていた項目(尿酸・中性脂肪・TC・LDL-C・TB・ALT)では新基準範囲の上限と差がありますのでご注意ください。
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一定の条件を満たす健常者を募集し、採血して測定、異常値を有する個体を2次除外して正規分布化させた分布幅(95%信頼限界)のことをいう。
「基準範囲」は健康人だけから得られた、その分布幅を示すデータであり、検査値を判断する一種のものさしとして大変有用であるが、これは病気の診断やリスクの評価、さらには治療の目標のために作成されたものではない。
疫学研究から将来の発症が予測され、予防医学的な見地から一定の対応が要求される検査閾値のことで、予防医学的閾値ともいう。
これは、疾患の診断、治療、予防の判定のために用いられるものとして、各専門学会がガイドライン等の形で公表している。
検査項目
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臨床判断値
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予防医学的な根拠
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尿酸
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7.0 mg/dL
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高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン第2版
高尿酸血症は血清尿酸値>7.0mg/dL
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TG
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150 mg/dL
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動脈硬化性疾患予防ガイドライン2017年版
高TG血症はTG≧150mg/dL
高LDL-C血症はLDL-C≧140mg/dL
境界域高LDL-C血症は120〜139140mg/dL
低HDL-C血症はHDL-C<40mg/dL
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LDL-C
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140 mg/dL
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HDL-C
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40 mg/dL
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TB
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1.2 mg/dL
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専門医との協議に基づく
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ALT
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30 U/L
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専門医との協議に基づく
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疾患名
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ガイドライン
(監修・著編者)
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抜 粋
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透析患者の
C型ウイルス肝炎
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透析患者のC型ウイルス肝炎治療ガイドライン
(日本透析医学会)
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透析患者のALT の正常上限に関しては27 IU/mL。
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脂質異常症の
スクリーニング
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動脈硬化性疾患予防
ガイドライン2017年版
(日本動脈硬化学会)
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LDL-C140mg/dL≦高LDL-C血症、120〜139r/dLは境界域高LDL-C血症、HDL-C40mg/dL未満は低HDL-C血症、TG150mg/dLは高TG血症。
LDL-CはFriedewald(TC − HDL-C − TG/5)の式で計算する(TGが400 mg/dl未満の場合)。または直接法で求める
TGが400 mg/dl以上や食後採血の場合にはnon
HDL-C(TC − HDL-C)かLDL-C直接法を使用する。ただしスクリーニング時に高TG血症を伴わない場合はLDL-Cとの差が+30mg/dLより小さくなる可能性を念頭においてリスクを評価する。
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慢性腎臓病
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エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2018
(日本腎臓学会)
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CKD
における脂質管理目標として、冠動脈疾患の一次予防でLDL-C120mg/dL 未満またはnon-HDL-C150 mg/dL 未満、二次予防でLDL-C100 mg/dL 未満またはnon-HDL-C130 mg/dL 未満を推奨する。
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腎移植後内科・
小児科合併症
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腎移植後内科・小児科系合併症の診療ガイドライン2011
(日本臨床腎移植学会)
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腎移植後発症糖尿病の管理目標値は、空腹時血糖130 mg/dL未満、食後2時間値180
mg/dL未満、HbA1c 6.5%未満である。
腎移植後脂質異常症のLDL-コレステロール管理目標は、一次予防群で<120 mg/dL、二次予防群で<100 mg/dLとする。
CKD-T症例である腎移植レシピエントの目標血清尿酸値は、
8 mg/dL未満である。
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高尿酸血症・
痛風
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高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン第2版
(日本痛風・核酸代謝学会ガイドライン改訂委員会)
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高尿酸血症は血清尿酸値が7.0r/dLを越えるものである。
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