網膜色素変性症について |
項目
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内容
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頻度 | 我が国では3,400〜8,000人に1人、世界中で約150万人と、遺伝性疾患としては比較的頻度が高い。 |
原因遺伝子 | 候補遺伝子も含め現在までのところ40個程度同定されている。 (1)ロドプシン(光受容体タンパク質) (2)ペリフェリン/RDS(視細胞外節円板の構造維持に必須のタンパク質) (3)PDEβサブユニット(光トランスダクションに関係する酵素) |
遺伝形式 | 常染色体優性、常染色体劣性、X染色体連鎖性など様々で、それに伴い表現型である臨床像が異なる。 |
自覚症状 | 夜盲が初発症状であることが多く、進行すると周辺部視野障害・視力低下へとつながり、最終的に失明に至ることもまれではない。眼の異常に初めて気付いた時期は平均26歳前後であり、全体の60%が30歳未満であるとの報告があるが、これも個人差が大きい。 |
臨床検査所見 | (1)視力:中心視力に関しては、症例の病型・進行度により影響を受けるが末期まで比較的保たれることが多い。 (2)視野:輪状暗点、徐々に拡大して最終的には中心のみ残存する。 (3)眼底検査:骨小体状の色素沈着と網膜動脈の狭小化が典型的所見(図:作成中)。 (4)網膜電図(ERG):診断に際して最も鋭敏な情報を提供する。網膜色素変性症ではその眼底所見に比較してERG所見が高度に障害されているのを特徴とし、a波、b波の振幅が低下ないし消失が見られる。 |
診断 | 自覚症状、眼底所見、網膜電図所見などを総合的に判断したうえで行われる(表)。また全身疾患を伴って網膜色素変性症が認められることもあり、聴力など他の疾患の存在の有無を確認する必要がある。 |
合併症 | 症状の増悪を認めた場合、疾患自体の進行によるものか、合併症の存在によるものかを明らかにし、合併症に起因するものであれば速やかな治療が必要となる。そのためにも定期的な眼科受診が望まれる。 (1)白内障:術後視力改善が70%以上の患者で認められることが多く、患者の生活の質を向上させるために手術を積極的に推奨する報告が多い。 (2)黄斑部疾患:嚢胞様黄斑浮腫、びまん性黄斑浮腫、黄斑上膜、黄斑円孔、黄斑萎縮などが。黄斑浮腫に対しては、副作用に注意しながら炭酸脱水酵素阻害剤の内服が有効であるとされている。 |
治療 | 現在までのところ有効なものはないものの、なんとか患者の視機能を少しでも改善しようと、いくつかの薬物療法が行われている。 (1)ビタミンA大量療法:1993年にBersonらによる大規模な臨床試験で効果が認められた唯一の治療であるが、この結論を疑問視する研究者も多い。肝腫大などの全身的副作用の可能性。 (2)ニバジール:カルシウム拮抗薬。動物実験において視細胞の変性、網膜電図の改善に役立ったとの報告があり、現在検討が進められている。 (3)その他:アダプチノール、メチコバール(ビタミンB12)、レスキュラ(プロスタグランジン製剤)、ユベラ(ビタミンE)については、明らかな有効性は証明されていない。特に、健康食品などで効果が謳われているものについては、科学的根拠が乏しいので使用するべきではない。 |