| 血管新生の分子メカニズムと虚血性疾患、血管新生病の治療技術の開発 | |
| 血管新生は、個体発生・生殖過程における胚子の発育や黄体形成のほか
、本来成熟個体においては組織障害ならびに炎症に引き続く修復過程(創傷治癒過程 )の1つとして普遍的に認められる生理的な生体反応である。一方、腫瘍、増殖性糖
尿病性網膜症、リウマチ様関節炎、感染症、カポジ肉腫、動脈硬化症など病的にも認 められる。こうした疾患群は、新生血管自体が病因であったり、さらに組織や臓器機
能障害を招来する場合があり、血管新生病として最近注目されている。しかし未だ効 果的治療法は確立されておらず、血管新生抑制因子の発見、あるいはその応用による
治療開発に大きな期待が集まっている。 そこで現在我々の教室では、生理的ならびに病的血管新生の分子制御機構とその意 義について以下の項目を中心に解析を行い、ひいては適切なる血管新生機序の誘導制 御法の確立に向けた研究も志向している。 |
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1.虚血組織における血管新生の分子機構について1)急性下肢虚血動物モデルでの外来性VEGF、FGF-2による側副血行路発 達促進効果の検討:SeVベクターを用いてVEGF、FGF-2遺伝子を虚血筋組織に導入する と、FGF-2遺伝子導入で内因性VEGF, HGF発現が亢進し、組織学的検索ならびに血流測定により新生血管の増加と側副血行 路形成が証明でき、明らかな下肢虚血の改善が誘導された。VEGF遺伝子導入では明ら かな下肢虚血の改善は認めない。 2.血管リモデリングにおける新生血管の病態学的意義について 動脈硬化進展の病理形態学的指標の一つとして硬化病変における血管新 生の重要性をヒト冠動脈の病理学的検討より明らかにした。特に1)動脈硬化を含めた 病的血管リモデリングの発生病態を炎症・修復反応として総括しうる事、2)その誘導 因子としてVEGF・受容体系を中心としたサイトカイン網が重要な事を明らかにしてい る。 3.血管新生関連因子の遺伝子制御の解析 病的血管リモデリングに関与しうる諸因子の産生制御法として、炎症性 サイトカインの転写誘導に関与する因子のデコイオリゴを用いたin vitro、in vivoの検討し、これがVEGF、TGF-β1、組織因子など血管新生に関与する 諸因子の腫瘍細胞、平滑筋細胞産生制御に有効であることを証明してきた。現在、各 種血管新生病動物モデルを用いた治療的有効性について病理学的検討を進めている。 |
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