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Guideline
前立腺肥大症の診療ガイドライン
1.前立腺肥大症の診断フローチャート

 前立腺肥大症が疑われる患者さんには以下のステップに従って、診断を行います。
(1)基本的評価
・前立腺肥大症が疑われる50歳以上のすべての男性に行う。
・病歴
・身体所見(直腸指診、神経学的検査)
・尿検査
・腎臓機能評価(血清クレアチニン測定)
・前立腺特異抗原(PSA)測定
 (前立腺癌の除外診断のためにも行うことが望ましい。)
(2)排尿障害症状の定量的評価
基本的評価で排尿異常が示唆されたなら、国際前立腺症状スコア(I-PSS)、QOLスコアによる症状評価を行い、重症度を評価する。

IPSS
0〜7点
軽 症
8〜19点
中等症
20〜35点
重 症
QOLスコア
0〜1点
軽症
2〜4点
中等症
5〜6点
重症

I-PSSによる評価で中等症または重症と評価された患者さんには、さらに排尿機能、前立腺形態の評価を行う。
(3)排尿機能、前立腺形態の評価
I-PSSによる評価で中等症または重症と評価された患者さんに、さらに排尿機能(最大尿流率、残尿測定)、前立腺形態(直腸指診、経腹壁的超音波断層診断法)の検査を行い、重傷度を評価する。

機能評価
最大尿流率  残尿測定
 
≧15mL/秒 かつ <50mL
軽 症
≧5mL/秒 かつ <100mL
中等症
<5mL/秒 または ≧100mL
重 症
前立腺形態評価
20mL未満
軽 症
50mL未満
中等症
50mL以上
重 症
(4)前立腺肥大症の全般重症度判定
排尿障害症状(I-PSS、QOLスコア)、排尿機能、前立腺形態のそれぞれの評価の重症度の数により、全般重症度判定で判定する。

全般重症度判定
全 般
重症度
全般重症度
軽 症
中等症
重 症
軽 症
4
0
0
3
1
0
中等症
不問
≧2
0
不問
不問
1
重 症
不問
不問
≧2
(5)オプション検査
手術適応の決定のためには、さらに内圧・尿流検査(排尿筋収縮障害と下部尿路通過障害の鑑別および通過障害の定量的評価、治療効果の予測も可能)、膀胱尿道鏡検査(膀胱・前立腺部尿道の観察)を行うことが望まれる。
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2.治療指針の提示
 判定された重症度をもとに治療指針を提示し、実際の治療へ進めます。
前立腺肥大症は患者のQOLに影響を与える疾患であることから、
(1) 治療法の選択にあたって各治療法の得失に関する情報を患者に提供し、
(2) さらに社会的要因など病態以外の要因(※)も考慮して患者と相談の上、治療法を決定
  する。
(※) 年令、併発疾患、侵襲性と根治性、患者の希望、性機能、社会・日常生活など
前立腺肥大症の診療ガイドライン(アルゴリズム)
前立腺肥大症の標準的な診断・治療の流れを、簡便な形で表示した。

前立腺肥大症の診療ガイドライン

※重篤な前立腺肥大症として区分し、本アルゴリズムから独立して分類した。
 これらの病態では、手術などによる抜本的な治療が必要である。
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3.前立腺肥大症の治療
 治療は以下の5つに大別されます。
(1)経過観察
軽症の患者さんには標準的治療の選択肢である。しかし、症状悪化や合併症がみられるときは速やかに適切な治療を選択する。
(2)薬物治療
全般重症度が軽症から中等症の患者さんが適応となる。

 

薬 剤

作 用
備 考
標準的治療
α遮断薬
(ハルナール等)
膀胱頚部、前立腺の平滑筋弛緩
比較的効果発現が早い、中長期の効果もあり
 
抗男性ホルモン薬
前立腺容積の縮小
効果発現は緩徐、投与中断により前立腺増大、性機能関連の副作用あり
 
その他の薬剤(植物エキス製剤、アミノ酸製剤、漢方薬など)
不明(※)  
(※)臨床研究として十分に解明されておらず、今度の検討が必要である。

前立腺肥大症の前立腺

α遮断薬の作用機序

抗男性ホルモン剤作用機序
前立腺肥大症の前立腺
α遮断薬の作用機序
抗男性ホルモン剤作用機序
 
(機能的閉塞を緩和する)
(機械的閉塞を緩和する)
経尿道的前立腺切除術(3)手術
最も侵襲的であるが、肥大した腺腫を切除できるため、排尿障害の改善に最も有効性が高い。経尿道的前立腺切除術(TURP、右図)は最も普及しており、前立腺肥大症の外科手術として確立した標準的治療である。
ステント挿入法(4)低侵襲性治療
レーザー、ステント(右図)、高温度療法(thermal therapy)などがある。低侵襲性と安全性の報告はあるが、他の治療法と比較した有効性ならびに長期成績に関する充分なデータはない。
尿道留置カテーテル(5)尿道留置カテーテル
バルーンカテーテルを尿道に挿入し尿道を押し広げる(右図)。しかし、長期にわたる尿道バルーンカテーテルの留置は患者のQOLを著しく低下させ、尿路感染症や膀胱結石を合併する頻度が高い。
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