九州大学皮膚科学教室 ムラージュコレクション

悪性梅毒

1.

現在の病名
あくせいばいどく
悪性梅毒
Malignant syphilis
0000_3184

 左肘から前腕外側部に、径が2cm大までの(かき)(がら)(よう)()()を伴った結節が多発し、色素沈着も伴っている。梅毒の皮疹である。我が国に梅毒が伝播したのは1500年代初期とされる。江戸から明治時代に大流行した後、第2次世界大戦後に再流行した。1950年では10万人当たりの年間罹患率は91であったが、1997年には0.4に激減している。しかし、近年、再興の兆しがある。「大きな皮疹」、 「皮膚(ひふ)潰瘍(かいよう)」、 「(かき)(がら)(よう)()()を伴った結節」といった皮膚症状を特徴とする第2期梅毒は、 悪性梅毒(Malignant syphilis、Syphilis maligna、Lues maligna)などと呼ばれ、 発熱、 るいそう(体が急激に()せてしまうこと)といった全身症状を伴い、 時に死に至るまれな病型である。写真は、「(かき)(がら)(よう)()()を伴った結節」を伴った梅毒の皮疹である。このような重症の皮疹をもつ患者を診ることは現在ではほとんどない。フレミングによって1929年に発見されたペニシリンは、1942年よりベンジルペニシリンとして実用化されたが、梅毒にもきわめて効果が高い。ペニシリンに代表される抗生物質の開発によって、現在では梅毒を早期に治療することが可能である。

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