研究室のご紹介

周産期研究室

研究室主任 藤田恭之講師
研究室員 諸隈誠一特任准教授、日高庸博助教、蜂須賀正紘助教、城戸咲助教、中野 嵩大臨床助教、湯元康夫特別教員、蜂須賀信孝大学院生、前原佳奈大学院生、清木場亮大学院生、甲斐翔太朗医員

2017年4月現在

当研究室では以下の項目に関する研究を行っています。

胎児行動学からみた胎児発達過程に関する研究

当科では、超音波断層法を用いて胎児の行動を観察し、行動の変化から中枢神経系の発達過程を捉えるという研究を行っています。これまで、胎児期の睡眠に関わる眼球運動や口唇運動を観察し、妊娠週数に伴う変化を明らかにしてきました。さらに、得られた結果から、臨床に役立つ検査方法の考案も行っています。また、胎児は、母体の感染や炎症、ストレス、食事、化学物質、大気汚染など様々な環境にさらされています。子宮内の環境が胎児の発達、ひいては出生後の発達にどのような影響を与えるかについても合わせて研究を行っています。

胎児の循環動態に関する研究

胎児の循環動態を心機能と抹消循環の両面から非侵襲的に評価する研究を行なっています。具体的には、心機能に関しては、超音波ドプラ法を用いて、心臓弁(僧帽弁、大動脈弁)の閉鎖・開放信号を同定し、胎児における心時相解析を行い主に等容性収縮期、等容性拡張期を計測しています。また、エコートラッキング法を用いて胎児下行大動脈の脈波波形を記録し、その立ち上がりの変化(max dD/dt)が成人におけるmax dP/dtの代用として心収縮能の指標となり得るか検討しています。また、末梢循環に関しては、成人におけるAugmentation Index (AI)と同様に胎児脈波波形から算出し、その臨床応用について検討しています。

今後の展望として、胎児心機能低下例で等容性収縮期が延長することは、すでに報告しており、また、胎児貧血、胎児不整脈症例においても胎児心時相解析の有用性が示唆されつつあります。パルスドプラ法を用いることで汎用の超音波診断装置を用いて胎児心機能がより簡便に、そしてより正確に評価できるのではないかと考え、臨床応用を検討しています。一方、脈波波形解析に関しては、脈波波形が圧波形と相似であることから、成人での動脈圧の推定法を応用して、胎児の血圧に関する情報を得ることができる可能性があります。この脈波からの血圧推定法が確立されれば、胎児の循環障害あるいは循環不全を成人同様に診断できる可能性があります。こうした視点から、本法を臨床的に新たな胎児循環モニタリング法の一つとして応用できないか検討中です。

胎盤形成における絨毛細胞の分化機構と妊娠高血圧症候群の病態に関する研究

妊娠高血圧症候群は、妊娠中に高血圧と蛋白尿を来す疾患で、全妊婦の約7-10%に認められます。この病因・病態については未だ明らかとなっていませんが、血管内皮細胞障害とともに、胎盤の形成障害が関わることがしられています。絨毛細胞は胎盤形成過程で母体組織に浸潤するとともに母体由来血管の内皮を置換します。この分化は妊娠の維持成立に重要な役割を果たし、その異常は妊娠高血圧症候群をはじめ多くの妊娠関連疾患に関わると考えられています。当科では、この過程に妊娠期の子宮内の微小環境を形成する炎症性サイトカインTNF、血管新生因子VEGF、細胞外マトリックスが大きく関わることを発表してきました。現在DNAマイクロアレイ解析や分子細胞生物学的手法を用いてこの過程の制御機構やその妊娠成立維持における生理的な役割についての検討を行っており、流産や妊娠高血圧症候群などの新たな治療の開発につなげていくことを考えています。

早産ハイリスク妊婦におけるプロゲステロン腟坐剤による早産予防効果に関する検討

流早産既往のある妊婦さんは、その後の妊娠においても早産となるリスクが15・0%と高くなることが知られています。このような早産ハイリスク妊婦さんに対し、海外では、プロゲステロン筋注の早産予防効果があるといった報告もなされています。当科では、より妊婦さんへの負担の少ないプロゲステロン腟坐剤を投与することで、早産を予防することができるかについて臨床研究を行っています。この研究によって、早産のリスクのある妊婦さんに対してプロゲステロン腟坐剤を用いることで早産率が減少するということが明らかとなれば、切迫早産に対する新たな治療へとつながる可能性があります。

胎児発育不全症例の管理指針に関する他施設共同研究

胎児発育不全(胎児の大きさが当該妊娠週に比して小さい)の場合、子宮胎盤循環不全の証拠に乏しく病的意義の不明瞭なまま経過するものも多くある一方で、付随しうる子宮胎盤循環不全が高度になると児に低酸素や酸血症が起こり、生命発達予後への悪影響が懸念されます。早産による未熟性は可能な限り回避したいと考えますが、循環不全に陥った子宮内環境に長くとどめすぎて胎児死亡に至ることも避けなくてはなりません。従来からその限界を指摘されている胎児心拍数陣痛図だけに頼らず、超音波検査を頻回に行い胎児胎盤循環の指標となる血流評価を詳細に観察することで生命予後だけでなく良好な発達予後まで見越した適切な娩出時期の決定を目指しています。

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