文部科学省科学研究費特定領域研究「性分化機構の解明」 *

領域活動

第3回領域会議開催報告

2006年9月11日(月)〜2006年9月13日(水) 兵庫県淡路市

領域会議に参加して (敬称略)

001 和田友香 /002 清水慶子 /003 奥村康一 /004 坂元志歩
005 大竹博之

005 大竹博之 (新潟大学大学院・自然科学研究科 博士後期課程2年)

 「2006年9月11-13日、淡路夢舞台国際会議場にて開催された特定領域研究「性分化機構の解明」第3回領域会議に参加する機会に恵まれました。僕にとっては、2006年2月末に開催された若手中心のミーティングである「第1回冬のワークショップ」に続き、2回目の特定領域関連集会への参加となりました。今回は、計画研究・公募研究の先生方が進めておられる「性」研究の最前線のお話を直接聞けると知り、少なからず興奮しました。

 はじめの挨拶で諸橋先生は、各班員の研究成果をその業界のスタンダード誌に載せることを目標にして欲しいとお話されました。評価の高い雑誌に載せるには、現象の正確な記載だけでは不十分で、新しい概念やメカニズムを示す必要があります。諸橋先生が何度もお話されている「性分化のメカニズムを解き明かしたいという目的に直結するものだと思いました。また、博士課程も半分が過ぎ、早く次の論文を出したい、業績を増やしたいと焦る気持ちが芽生えていた僕にとって、サイエンスに貢献する研究成果・論文とはいかなるものかを深く考える必要性を再認識させられました。

 初日、研究成果をポスターで発表する機会も頂きました。発表時間が許す限り、多くの先生方と1対1で議論させていただいたことは、貴重な体験となりました。残念だったのは、冬のワークショップでのポスター発表から半年以上経つにも関わらず、有意義なデータを加えられなかった事でした。冬のワークショップでは、諸橋先生から直接コメントを頂き、本会議までに改善しようと思っていただけに悔いが残りました。今回行われた新しい試みとして、山田源先生主催によるポスターコンペティションがありました。上位3名には、賞品として藤原正彦著「国家の品格」(しかも諸橋先生のサイン入り)が贈呈されました。このような試みは参加者のモチベーションの向上につながるので続けて頂きたいと思う一方、次の機会に上位に食い込めるよう一層努力すること、またそれまで「国家の品格」は買わないでおくことを心に誓ったのでした。

 初日終了後、恒例の自由討論会(懇親会)が行われました。国際会議場の一室にテーブルが二つとたくさんの椅子が壁を背にセッティングされていましたが、諸橋先生の提案でテーブルと椅子は使わず、絨毯の上で円形に座るスタイルに変更されました。このような行為の中に、領域代表が、ベテランと若手の融合や班内の議論の活発化などに常に心を砕いている様子を感じることができたのが印象的でした。その甲斐もあって夜中まで議論は尽きず、僕自身も多くの方と親交を深めることができました。ホテルの部屋は、学生や若い研究者は他の研究室の人と同室になります。普段全く別の研究環境にいる人と寝食を共にすることは、領域会議に参加するひとつの魅力だと思います。一緒に朝食をとりながら、研究室の構成やセミナーの方式、実験動物を扱う上での苦労話、ボスの内緒話(?)などを聞くことができたのは、僕にとって楽しい時間でした。

 二日目、会議中最も印象に残った鍋島先生と長濱先生の議論がありました。「性分化機構の解明」は、この先何年あるいは何十年にもわたってホットな研究対象となり得る壮大なテーマであると思います。SryやDMYの同定はこのテーマの発端であり、次にどの部分を明らかにしようとするのか、独創的なアイディアとアプローチを持って挑戦することが求められているのだと感じました。また、どのようなアプローチでどこまで明らかにしようとするのかを可能な限り明確に示すことが、今回の会議に臨む上で重要な事であったと解釈しています。その上で結果が求められる、研究を生業にするとはいかに厳しい事かということも痛感した瞬間でした。

 会議の最後に、鍋島先生は「会議に参加して、ひとり知り合いを増やしたとか、ひとつ新しいアイディアを思いついたとか、何か持ち帰れるものを見つけることが大事だ」とお話されました。自分の将来や研究の進め方について少なからず不安を抱き、悩むこともしばしばある博士課程のこの時期に、この会に参加できたことは、僕にとって非常に有意義でした。今回の会議に参加して、僕が持ち帰ってきたものは、興味深い研究テーマに邁進しておられる方々の姿を実際に目にして、将来目指す研究者像が「少し」見えた感触でした。

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