文部科学省科学研究費特定領域研究「性分化機構の解明」 *

領域活動

第3回 冬のワークショップ開催報告

2008年3月3日(月)-5日(水) 静岡県御殿場市

第3回 冬のワークショップに参加して(敬称略)

吉田松生・杉本幸彦 / 山本 友里恵 / 野殿 英恵

山本 友里恵(琉球大学理工学研究科海洋環境学専攻)

 今回,私は特定領域研究「性分化機構の解明」冬のワークショップに初めて参加いたしました.私の参加した経緯は少し特殊で,これを読んでいる多くの方々とは異なると思われます.そこでその経緯と実際に参加した感想について書かせていただくことになりました.

 私は現在,性決定様式と性比の関係を爬虫類のヤモリを用いて調べています.所属研究室は主に,爬虫両生類の系統分類と生態に関する研究を行っています.本研究室のメンバーに共通しているのは爬虫両生類に関する知識が豊富であるという点で,これは研究に用いる種についての知見を収集するのに非常に適した環境であると言えます.しかし特定の分類群ではなく,ある現象をテーマとして研究を行いたい場合には,研究室や分野の枠から飛び出すことが必要だと私は考えています.逆の場合つまりある現象を扱う研究室であれば,自分が用いている分類群に関する情報は少なくなってしまいますので,最終的には何に重きを置くかということではあるのですが,自分の興味・関心とまさに一致した場にめぐり合うのはなかなかに難しいことです.そこで私の場合は,性決定や性分化の分野に関しては自らが積極的に勉強の機会をつくるべきだと考えました.まずは関連の学会を探したのですが,そのような学会は少なくとも国内にはなく,その探索の中で特定領域研究「性分化機構の解明」のHPに出会いました.そんな折,本特定領域にて計画研究をされている北海道大学の松田洋一教授が,わが琉球大学にて特別講義をなさるという機会があり,また松田先生は私の用いているヤモリ類の染色体構造の解析をされていることから,私の指導教員である熱帯生物圏研究センターの太田英利教授を通じて,直接お話をする機会を得ました.そこで本特定領域研究についてお尋ねし,今回のワークショップのオーガナイザーである吉田松生先生と杉本幸彦先生に紹介していただきました.こうして改めて振り返ってみますと,本ワークショップ参加の最初のきっかけとなった「性分化機構の解明」HPにまさか自分の文章が掲載されることになるとは,とても不思議な気持ちです.

 そのような経緯で参加することが出来た本ワークショップで一番印象的だったのは,質疑応答がとても活発で,そして皆がそれを楽しんでいるということでした.冬のワークショップは若手中心ということで(しかし一体どこまでが若手なのか?という点は未だに謎です),立場や年齢に関係なく先生方の議論が活発になされているという印象を受けました.ただ,どの学会等の集まりでも同じ傾向があるようですが,学生による質問が参加者の割合にしては少ないと感じました.そうは言っても現実的にはレベルや分野の違いというものがあり,先生方の知識や勢いに圧倒されてしまうのですが,自分も含め院生の皆さんはもっと積極的に議論に入っていけたらと思います.ポスター発表では,色々な分野から性分化という共通の興味・関心を持って研究者が集まっていることの良さがまさに発揮され,同じ事象が他の分類群の場合ではどうかということや,研究方法に関するアイデアと指摘を頂けました.このような議論はとても刺激的で,自身の今後の研究にとって大きな収穫となりました.

 この2泊3日は朝9時に始まり夜は限りなく,とても濃厚な時間を過ごすことができました.懇親会では普段参加している学会では関わることの出来ない分野の方々の研究内容,先生方の研究に対する思いといったことも聞くことができ,ついつい夜遅くまで参加してしまいました.これも参加者が寝食を共にする本ワークショップならではの醍醐味だと思います.

 今回の参加にあたって,関係の先生方と運営スタッフの方々には大変お世話になりました.この場をお借りして深く御礼を申し上げます.そして「性分化機構の解明」の活動のさらなる発展をこれからも期待しています.

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